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芸術の秋・食欲の秋
秋はスポーツたけなわの季節であるとともに、
芸術、食欲の時でもある。

11月7日、ここの所めっきり少なくなった秋晴れの一日、
この日をおいて芸術を楽しみ、且つ、食欲を満たす日はない。

先ず向かった先は日比谷、TOHOシネマズ・シャンテで公開中の映画、
「女神の見えざる手」を観ることであった。
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オリジナルタイトルとなっている"MISS SLOANE"(ミス・スローン)は
本編の主人公、凄腕のロビイストである。

銃規制問題で揺れるアメリカ社会、
銃規制是か非か?

巧妙な戦術を駆使して政治を裏から操るクールで美しい
敏腕ロビイストを描いた社会派推理劇である。

「恋におちたシェークスピア」「マリーゴールドホテルで会いましょう」等、
寡作ながら傑作を世に送り続けるジョン・マッデン監督の腕の冴えを
十二分に楽しむことが出来た。

監督の期待に応えたのがミス・スローンを演じるジェシカ・チャスティン、
ハリウッドの百花繚乱ともいえる多彩な人材に目を見張らされた。
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精神安定剤を常用、相手陣営を陥れるためには信頼する部下の命まで危険にさらす、
時にはストレス解消のためにエスコートクラブの男とベッドを共にする。
遂には・・・・・・、ここから先は言わぬが花。

上司までもが「君は本当に厄介だ」と言わしめる女、スローン、
アメリカ社会ならば有りうることと納得しながら
上質の推理劇に気持ち良く翻弄された。


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# by shige_keura | 2017-11-10 09:53 | | Comments(0)
千姫と坂崎出羽守
小学校の頃だから、60年以上の大昔のことなのだが、
「千姫」というタイトルの映画を観た。

調べてみると本作品の公開が1954年であるので
私が10歳の時のことだと判明した。
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主役の千姫に扮した京マチ子の記憶はおぼろげなのだが、
その一方、槍を振るって姫を大阪城から救出する
勇猛果敢な坂崎出羽守(山形勲演)は良く覚えている。

何故、このような昔話を持ち出したのかというと、
国立劇場11月公演、「坂崎出羽守」を鑑賞したからだ。

今回の鑑賞は昔を思い出すだけでなく
新たなことを学んだことともなった。

それは、この演目の作者が「路傍の石」でおなじみの
文化勲章受章屋者の山本有三であり、
彼の生誕130年を記念して36年ぶりの上演となったことだ。

山本有三が「路傍の石」を出版したのが1937年なのだが
「坂崎出羽守」を完成させたのは、それより早い1921年、
名歌舞伎役者の六代目・尾上菊五郎のために書き下ろしたものだ。

その後、「坂崎出羽守」は菊五郎から、これまた名役者の二代目尾上松緑、
そして若くして世を去った初代・尾上辰之助を経て
36年ぶりに当代の四代目尾上松緑が演じている。

この作品の最も重要なところは
無骨者で直情な坂崎出羽守が千姫に対して芽生えた恋心と
姫を助け出したときに負った無残な火傷からの劣等感、
そして武士として受けた耐えがたい屈辱感、
それらの屈折した心理描写を細緻に表現するところにある。

それを、当代松緑は初役で
獅子奮迅の熱演で応えようとしているのは良く分かるが
まだまだ、祖父・二代目松緑と比較云々ではないと感じた。





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# by shige_keura | 2017-11-07 15:20 | | Comments(0)
世界の「桑畑」と「椿」

渋谷東急本店で行われている、
三船敏郎映画デビュー70周年記念展
「世界のミフネと呼ばれた男」を覘いた。

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世界に誇る日本の大スターの美辞麗句が躍る中、
彼の出演映画はもとよりプライベートを紹介した多数の展示が行われていた。

三船敏郎、彼の存在感、カリスマ性を認めることに吝かではないが
彼の演技力を含めた代表作はどの作品になるのだろうか。

ヴェネチア映画祭で初のグランプリに輝いた「羅生門」で
最も光り輝いたのは京マチ子であり次に森雅之、
三船は主役3人の中では最も影が薄いと感じた。

映画史に残る大娯楽作品の「七人の侍」では
菊千代を演じた三船の異彩を放つ演技は認めるが
志村喬、宮口精二の存在感には及ばなかった。

黒沢明の現代劇で最も面白い「天国と地獄」でも
仲代達矢、山崎務に比べると三船は一歩及ばぬと感じたのは私だけだろうか。

オムニバスとも思える、数々のエピソードを巧みに積み上げた「赤ひげ」、
三船の豪胆な医者は天才子役二人、二木てるみと頭師佳孝にたじたじとなった。


三船敏郎が世界のミフネと呼ばれるほどの存在感を発揮した作品は
「用心棒」と「椿三十郎」に尽きると思っている。


桑畑とは映画、「用心棒」の冒頭で
名前を問われた主人公の素浪人が
一面の桑畑を見やりながら「桑畑三十郎」と野太い声で答えた名前だ。   

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続編となる「椿三十郎」では
隣の椿屋敷に咲く椿を見やりながら自分の名前を桑畑から椿へと変えている。
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「用心棒」の舞台は上州を思わせる空っ風が吹きすさぶ宿場町、
そこのやくざの縄張り争いに桑畑三十郎が割って入る物語。

続く「椿三十郎」はある藩のお家騒動に三十郎が加勢するお話で、
ともに似たようなストーリーとなっている。

ここでクローズ・アップされるのが敵役で両作品に登場する仲代達矢である。

「用心棒」では短銃を懐にしのばせるニヒルなやくざ卯之助、
「椿三十郎」では剃刀を思わせる凄腕の家臣、室戸半兵衛、
若き日の仲代達矢、一世一代の演技である。

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(「用心棒」の三船敏郎と仲代達矢)

一般的に映画では悪役が強そうに悪そうに見えれば見えるほどに
主人公の存在感が一層引き立ってくるのだが、
まさに仲代があればこそ三船敏郎の存在感が圧倒的にスクリーンを支配している。

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                   (「椿三十郎」最後の決闘、三船対仲代)
稀代悪役が放つ毒の花を余裕をもって受け止めて主役は誰にも譲らない、
まさに世界のミフネが君臨した作品である。


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# by shige_keura | 2017-10-27 18:14 | | Comments(0)
巨人の泣き所
台風に水を差される感があったプロ野球クライマックスシリーズも終盤を迎えている。今年のペナントレースのトピックスのひとつは巨人が11年ぶりにBクラスの4位に転落したことだ。


この凋落の理由を探ってみよう。



弁慶にも弱点があり、ギリシャ神話の無双の英雄アキレスにも踵に弱点を抱えていたのだが、巨人の最大の泣き所はどこにあったのだろうか?

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投手陣にその責任を負わせるわけにはいかない。



防御率を見てみれば菅野1位、マイコラス2位、田口7位、
この3人で勝ち星の貯金が27、安定した三本柱を有しながらAクラスに入れなかったのは何故だろうか。



内海、宮国、大竹、山口等、他投手陣の誤算もあるが
総失点数504はセリーグ1位、2位阪神の528、3位広島の540を大きく引き離した。
にもかかわらず4位に甘んじたのは
歯がゆいほどに打てぬ打線が一切の責を負わねばならぬであろう。



総得点はリーグ4位、本塁打数と打率が阪神と並ぶ3位、
特にランナーが塁上を賑わせても決定打が打てぬ状況に
何度も切歯扼腕した巨人ファンは多かったに違いない。



この貧打線の象徴が8番の小林であることに間違いない。

規定打席到達選手中、小林の打率は0・206で最下位の28、
これは27位の中谷の打率0・241に大きく離されている。安打数はたったの78本で中谷の99本に20本以上遅れをとり、
本塁打数の2本も最低である。


いくら肩が良く投手には頼られてもこう打てぬのでは話にならない。
5,6番が連続出塁して無死1,2塁、同点、逆転のチャンスだ!
ここで7番バッターの場面でベンチは頭を悩ませたに違いない。

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仮にバントで送っても次打者が小林では8割は相手にアウトを与えてしまう。
9番が打てる投手の菅野ならいざ知らず同点逆転のチャンスが8番打者の貧打のおかげでチャンスにならない。

シーズン中に解説者となった原前監督は言っていた。
「2割そこそこでは話になりませんね。せめて2割5分近くは打たなくてはいけません」。
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極論すればプロの中に一人だけ学生選手が入っているかのようなか弱さである。
バッティングも身体を象徴するかのように弱弱しく、バットを振り切らず撫でているかのようだ。

この、シーズンオフ徹底的に走り込み、バットを振り込み逞しいプロ選手となって来シーズンを迎えてほしい。




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# by shige_keura | 2017-10-24 10:02 | スポーツ | Comments(0)
ピカソと紫陽花
ピカソが紫陽花の絵を描いた事ではない。
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6月15日、梅雨の合間の晴れの日、
暑さを感じるが、時折涼やかな風が吹き抜けていく。
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ここは高級住宅地と言えば田園調布、
お馴染みの並木道を洒落た邸宅を見ながら進むと宝来公園。
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そこを右に入ってすぐの所に本日の目的地が現れる。
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福岡に続き「みぞえギャラリー」が、
ここ田園調布にオープンしてから5年を記念して
「ピカソ、その芸術と素顔」と題した特別展示が行われている。
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瀟洒な日本家屋は数十年前に一代で巨億の財産を築きながらも
波乱万丈な生涯を送った横井英樹氏が建てたと伝わっている。
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入館無料ながら訪れる人の数は平日の為か多くないので
ゆるゆると天才の芸術2点を鑑賞した。

ひとつはピカソが没する1年前(1972年)に描いた「男の顔」、
そしてゲルニカ空爆の前日に完成した「静物」だ。
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ゲルニカ空爆とは、
スペインが右派と左派に分かれて内戦に突入した最中、
フランコ将軍と手を組んだドイツ空軍が
1937年4月26日北部バスク地方の最古の町
ゲルニカを徹底的に破壊したものである。
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悲劇の一報をパリで聞いたピカソは
パリ万博の壁画に当初の予定を変更してゲルニカの悲劇を描く事を決心し
3.5メートル×7.8メートルの大作を1か月余りで完成させた。
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ゲルニカの壁画はむごたらしい惨状を
ピカソ独特のタッチで描き彼の傑作として
後世に伝わることとなっていった。

ここ、田園調布ギャラリーで見る「静物」は
ゲルニカの悲劇の前日を表すかのような
「嵐の前の静けさ」の雰囲気が伝わってきた。

展示のもうひとつのテーマ、「素顔」は
ピカソの晩年に家族のように寄り添うように暮らしたカメラマン、
ロベルト・オテロの数十にも及ぶ作品が展示されていた。

そこには娘に捧げるピカソの愛情に満ちた表情、
それとは対照的なスピーチに臨む前の
ピカソと関係者の緊張の糸が張りつめたかのような写真が印象的だった。

日本庭園を見ながらお茶に羊羹のサービスを満喫しギャラリーを出る。
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目的は無く足の向くまま坂を上り下りして
多摩堤通りを丸子橋を目標に進む。
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陽の照りつける中の散歩、
疲労感が増す頃に思い出したのが
多摩川台公園の紫陽花が見ごろだと言うことだった。
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公園内にはご同輩がスケッチをしたり写真を撮ったりと賑やかな事。
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紫陽花の種類も昔とは比べ物にならぬほど多くなり目移りがするが、
私は定番のブルーのものが最も好ましく思える。
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梅雨の合間の晴天の一日、
ピカソと紫陽花で充実した気分となった。
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# by shige_keura | 2017-06-23 09:51 | | Comments(1)
祭のあとの祭りの準備
競馬最大のお祭りと言ったら
「ダービー」(東京優駿)であることに異論をはさむ人は居ないだろう。

満3歳を迎えた若駒、7,500頭から選ばれし18頭が
一生に一度のチャンスを掴もうと晴れの舞台で躍動する。

               (2017年ダービー優勝馬、レイデオロ)
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馬を管理する調教師の人たちは、よくこんなことを口にする。

「ダービーが終わった翌日から
 来年のダービーに向けての準備が始まるのです」。

とは言え、ダービーが終わった翌週の土曜日の競馬場は
どことなく緊張感が解け放たれ、ゆったりとした気配が流れている。

中高校の先輩であり、敬愛する故山口瞳さんは
人気連載「男性自身」のなかで「ダービーのあと」と題して
東京競馬場に流れるゆるりとした雰囲気をものの見事に表現していた。

確か、こんなことが書いてあったように思うのだが。
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「春競馬のクライマックス、ダービーが終わった府中、
 そこはかとなくのんびりとした空気が漂っている。
 それはダービーが無事終わったあとの安堵感から来ているのだろうか。

 馬の数も気のせいか少ないようだ。

 すでに夏競馬の福島、新潟、北海道に旅立ってしまったのだろうか。

 ひと際逞しくなった馬たちが戻ってくる秋には
 違った名勝負が繰り広げられることだろう。」

6月3日晴天の土曜日、すなわちダービーの翌週、
府中競馬場に足を運んだ。

この季節に富士山がくっきり見えるのは珍しい。
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それほど空気は澄んで清々しい日だった。

この日のお目当ては午後の最初のレース、第5レースである。
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このレースは関東地区で行われる
最初の2歳馬のデビュー戦、つまり新馬戦である。

この年代の2歳馬が何頭いるのか知らないが
恐らく7,800頭はいるだろう。

その若駒が来年のダービーを目指す最初のレースなのである。

レース開始前30分、パドックに16頭の若駒が入場してきた。
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生まれてはじめてのレース前のパドック、
キョロキョロあたりを見渡す馬、
早くも胸前に汗を滴らせている馬、
古馬のように落ち着いている馬、
チャカチャカとせわしない歩様で歩く馬。

中では4番のビリーバーの気配の良さが目立っていた。
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4番人気とそれなりに人気を集めているのだが、
最大の懸念が騎手の岩部、
こういっては悪いが決して上手いジョッキーとは言えない。

御贔屓の田辺のブショウ(2番人気)か
柴田大地のヴイオトボス(3番人気)とも考えたが
結局は自分の目を信じ岩部のビリーバーをビリーブ(信頼)することとした。
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ゲートが開いて来年のダービー目指して
16頭が力強い蹄音を響かせ4コーナーから
府中の長い直線に入ってきた。
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残り200メートルの所で内をついて
4番のビリーバーが先頭に立ちゴールを目指す。

脚色は良いが抜け出すのが早すぎるのでは?

その懸念はゴール前で現実となった。

真ん中と外から2頭の馬がビリーバーを交わし
ゴール板を馬体を接するように駆け抜けた。

掲示板には1着12番ヴィオトボス、
2着14番ブショウ、3着4番ビリーバーと揚がった。

「うーん、残念、やはり騎手の腕の差が出たか」。

馬券戦術には負けたが、
本シーズン初の新馬戦を大いに堪能した。

来年のダービーにはどのような18頭がコマを進めてくるだろうか。

ダービーが終わった次の日から
来年の祭りの準備が始まったのだ。
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# by shige_keura | 2017-06-06 21:58 | | Comments(0)
端午の節句に欠かせぬもの
旧聞に属する話題だが、
今年の端午の節句はまさに五月晴れ、
風薫る中、青空を鯉のぼりが元気よく泳いでいた。
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端午の節句になくてはならぬものは
鯉のぼりのほかに兜、武者人形、
食べ物で言えば柏餅に粽と色々ある。
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ただ、重要なものにも関わらず、
忘れかけているのが菖蒲湯だと思う。

元来、端午の節句は別名菖蒲の節句と言われるほど
菖蒲が主役の厄払い行事であり、
菖蒲無くしては端午の節句は
成り立たないものであることを忘れてはならない。

端午の節句の歴史を紐解けば中国に
その源をたずねることが出来る。

中国ではその昔の旧暦5月は病気が流行し
多くの人がこの世を去った。

その為、厄除けに菖蒲を門に挿したり、
菖蒲に浸した酒を飲んで無病息災を祈願した。

この風習が奈良時代に日本に伝わり、
我が国独自の端午の節句となっていった。

すなわち、武家社会に入ると
菖蒲は尚武に通じると言うことから、
逞しく男子が成長していくことを願う今日の節句の基本形となった。
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鯉のぼりが躍るさまを見上げ、
兜等を飾り、粽、柏餅を食べるのも良いが
締めくくりにあるのが「菖蒲湯」である。

ただ、ここで基本的に間違えないでほしいのは
花菖蒲と菖蒲は全くの別物であることだ。
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花菖蒲は紫色がお馴染みの美しい花を咲かせるアヤメ科の植物。
花は美しいのだが葉や茎には
なんお香りもないし効能も無い。

従って花菖蒲の葉や茎を風呂に入れても何らご利益は無い。

一方の菖蒲はサトイモ科の植物で
花はガマの穂に瓜二つである。
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花だけで比べれば菖蒲は花菖蒲とは勝負にならない。

しかし、菖蒲の葉には独特の芳香があり、
茎や根には血行促進、鎮痛作用を持っている。

つまり、「見た目の花菖蒲、中身は菖蒲」となる。
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より良い香りと効果を得るためには
我が家のような給湯式風呂の場合は
最初から菖蒲を浴槽に入れてから
多少熱めのお湯を張るのが良い。

今年は残念ながら5月5日はとうに過ぎ去った。
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来年は是非、菖蒲の湯で温まっていただきたい。
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# by shige_keura | 2017-05-13 18:28 | その他 | Comments(0)
春よ来い
もう亡くなってしまったが、
好きな落語家の一人に春風亭柳昇という、
ばかばかしいことこの上もない噺家がいた。

冒頭の決まり文句がこれ。
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「私の名前は春風亭柳昇と申しまして、
 大きなことを言うようですが、わが国では・・・・・・・・
 私一人でございます」。

柳昇の持ちネタに「里帰り」というのがある。

嫁に行った娘の“おはる”が義母に苛められて度々里帰りするのだが、
ある秋の日、彼女が帰ってきた。

柳昇はとぼけた口調で訥々と言う。

「なんだ、はるがまた来たか、毎年、あきになるとはるが来るな」。

柳昇の言葉に倣うと、4月20日の山中湖畔は
「お春が来たと言うのにお冬は未だ居座ってるのかね」となる。

ゴールデンウィーク前、例年通り
夏の準備の為、山中湖畔の家の点検、掃除に出かけた。

庭の富士桜のつぼみは開いているだろうか?
旭ヶ丘、三国峠の山桜は?湖畔の桜は?

出発前の期待は見事なまでに裏切られた。
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山中湖周辺は未だ冬一色、出迎えてくれたのは黄色い水仙と
枯葉に埋もれるように咲いているクリスマスローズだけだった。
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木々もよーく目を凝らして見れば
若芽の息吹が感じられるものの冬木立、
灰色の世界が広がっている。
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しかも、この冬の厳しさを物語るように
木々の枝が折れ、例年に比べ景色が殺風景に感じられた。
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しかし、悪いことばかりではない。
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富士山は終日に渡り見事な姿を披露してくれたし、
北岳をはじめとする北アルプスの全容が
今日ほどくっきりと見えたことはない。
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山中湖のバックに広がる北アルプス
その雄大なパノラマにしばし目を奪われていた。
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# by shige_keura | 2017-05-09 08:43 | | Comments(0)
春の北陸路 -7-
  「一期一会」

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夜桜お七にたぶらかされたのか、
真っ直ぐホテルに帰る気にはならず、
向かった先はその昔よく通ったジャズバー。
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“Bokunen”の名前のバーは尾崎神社のすぐそば、
人っ気のない場所にいつものネオンがボーっと輝いていた。
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女性オーナーとの再会は3年ぶりぐらいなのだが、
覚えてくれていたらしく、
暫くして澄んだ音色のピアノと歯切れの良いドラムス、
アンドレ・プレヴィンとシェリー・マンによる名盤
「マイフェアレディ」が流れてきた。
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山崎のオン・ザ・ロックスでジャズを楽しむ。

演奏がジェリーマリガンに代わる頃、
一人の西欧人が店に顔を覗かせた。
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アルコールの勢いもあって通訳を買って出ると
初めての日本で金沢は友人から勧められたとのこと。

本当はライブを聞きたかったのだが休みだったので
この店の存在を聞いて入ってきたと言うわけだった。

隣同士で久しぶりの英語で悪戦苦闘しているうちに、
驚くべき展開となっていった。

彼はアイルランドから来たと聞いた途端に興味津々、
何故ならば私の最も尊敬する映画監督
ジョン・フォードの故郷であるからだ。

そして、ジョン・フォードの作品の中で
最も好きな映画が、
アイルランドを舞台にした「静かなる男」なのだ。
               (「静かなる男」スタッフ、右端がJ・フォード
                隣がV・マグラグレン、J・ウエイン、F・フォード、ジョンの兄
                前に座っているのがB・フィッゼラルド)
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               (「静かなる男」ジョン・ウエインとモーリンオハラ)
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忘れもしない1984年欧州でのバカンスを過ごしたのが
アイルランドの西海岸にほど近いキラーニー。
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当時の日本人にはほとんど知られてい居ないところだった。

               (1984年の夏休み、アイルランド馬にまたがる娘)
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               (ガルヴェイ湾を背景に)
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何故、そのような所に行ったのかの理由はただ一つ、
キラーニーはジョン・フォードの故郷
西海岸ガルヴェイ湾にほど近くだからだった。

ここからは、アイルランドの彼との会話である。

「アイルランドのどこから来たの?」

「ガルヴェイさ、と言っても知らないだろうけどね」

「なにーー、ガルヴェイだって! 
 ジョン・フォードの故郷じゃないか!!」
               (ガルヴェイ湾と断崖)
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「何だ、おまえ知ってるのか!ガルヴェイを、
 いやいや、信じられないなー、どうして??」

「知ってるも、知らないも、俺は欧州で働いていて、
 ある年の夏休みをキラニーで過ごしたのさ、
 自然が綺麗で、地元の人たちは皆親切で
 いいところだったなー」

「そーか!気に入ってくれたか!
 ありがとう、ありがとう」

「ジョン・フォードの「静かなる男」は良かった!!」

「あれは最高だよ、ジョン・フォード素晴らしいな。
 それにしても、金沢に来てよかった、
 まさか故郷の話が出来るとは思わなかったよ」

一期一会。
                (BOKUNENの入り口)
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心地よいモダンジャズ。

ウイスキーを山崎から
アイルランドのブッシュミルのストレートに代えて
アイリッシュ男との楽しい会話が続いた。

これだから人生は面白い。
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# by shige_keura | 2017-05-08 09:00 | | Comments(0)
春の北陸路 -6-
  「加賀の国の食文化」

加賀百万石の中心地である金沢の
食文化程度は極めて高い。

今回の訪問で加賀の味を堪能した三つのお店を紹介しよう。

先ずは、「乙女寿司」。
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金沢到着した4月12日の正午、その足で向かった場所は
片町スクランブル交差点裏に小体な店を構えている。

ここ2年ほど冬は千取鮨で夜をゆっくりと過ごし、
春或いは初夏に訪問した時は乙女鮨で握ってもらっている。

先ず驚くのは店主の記憶力の良さ、
お客さんの顔は1回見たら絶対に忘れないようである。

とにかく前回にどの席に座っていたかも
正確に把握しているのにはびっくりさせられる。

この日はお昼のお任せコースで
北陸の旬の味を満喫した。

ここの握りは千取と比べ若干柔らかめであるが
すし種は店主の若さもあって
新たな試みがなされているようだ。

千取では絶対に出てこないノド黒を
ひと炙りした握りは脂が程よく乗っていて絶品だった。

お任せ終了して、もう少し追加したいところをぐっと我慢する。

何故なら、夕食に腹具合を合わせておかねばならないからだ。

12日の夕食は金沢郊外、湯涌く温泉手前にある「つばき」。
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ここは和菓子の名店「吉はし」のご主人の紹介で
3度目の訪問となる。

3度目と言っても今まで2回は12月、
春に訪れたのは今回が初めてだった。

ここは狩猟の免許を持っている店主の小村さんが
山や渓谷で採取した恵みを振る舞ってくれる。
               (筍と山菜の煮物)
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冬は熊、鹿等々の「マタギ料理」、
春はバラエティに富んだ山菜、しし鍋、
夏は鮎、そして秋はキノコと
四季折々、料理の主役が変化していく。
               (川鱒の刺身)              
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そして、必ず出るのがすべてのお客が絶賛する濃厚なる胡麻豆腐。
               (山菜各種と胡麻豆腐・右上)
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福光屋のぬる燗をちびちび飲りながら、
春の鮮烈な香りにワクワクしながら箸を進め、
最後は濃厚なだし汁のしし鍋をつつく。
               (店内に活けてあった緑桜、花も緑色)
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春とは言え、夜になるとまだ肌寒い北陸、
鍋とお酒で暖まり満ち足りた気分となった。

13日の夕食は「雅乃」、
ここも吉橋さんの紹介で今回が初訪問だった。

金沢の老舗料亭銭屋の板長として腕を磨いたご主人が
15年ほど前に独立し犀川べりにお店を出した。
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部屋はふたつ、我々一行6名に絶好のカウンター席、
個室同然の優雅な場所、
目の前でご主人が緊張感をもって
包丁を振るう様が見られるのが素晴らしい。
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酒の種類も豊富なのだが
ぬる燗の酒は福光屋の「黒帯」と昨夜と同じ。
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居心地最高、料理も最高に大満足。
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良い気持ちとなって店を出る。
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横丁を曲がろうとしてふと後ろを振り向くと
ご主人はまだ深々と頭を垂れている。
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吉橋さん仕込みのお役様への対応、
ほろ酔い気分に犀川の夜桜が妖艶に微笑んでいた。
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# by shige_keura | 2017-05-07 17:31 | | Comments(0)



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