茶色のポットの中にある飲み物こそ
我が家のお正月に欠かせぬ味、 ”豆茶”である。 その昔の大晦日 家中、私を除いててんてこ舞いの忙しさだった。 それがひと段落する夜の深まった頃 台所から母の大豆を炒る音が聞こえてくる。 そのうちに、豆の香ばしい匂いが 漂ってくる。 それと前後して 何処かの寺の除夜の鐘の音が ボワーンと風に乗ってくる。 それが記憶の中にある 大晦日の典型的な光景である。 明けて、元旦、 重箱に綺麗に盛られたお節料理が 目の前に並ぶ。 しかしながら、目を引く色彩の豊かさとは裏腹に お節料理は概して苦手な物が多かった。 キントン、黒豆、伊達巻は甘すぎる、 田作りの甘辛さと苦さも御免こうむりたい、 さりとて、お膾の酸っぱさも大の苦手だ。 そのほか、煮しめ、カマボコ、数の子等 進んで箸をつけたいものは無かった。 その中で例外の品が三品。 ひとつは巾着、 鶏の挽肉に大量の三つ葉を混ぜ合わせて 油揚げに包み煮込んだもの。 (左の重箱の上に並んでいるのが巾着) 二つ目が 澄し汁に狐色をした焼餅をはったお雑煮。 (ここ数年、気に入っている”金沢風お雑煮” 昆布だしのお澄ましに野芹を思い切り入れる) そして、全ての料理が終わった後で味わう 豆茶であった。 朝からとんでもない物ばかり詰め込んで 胃袋はビックリ仰天! 目を丸くしている。 その胃袋をそっといたわるかのような 優しい味、それが豆茶だった。 今は我が家でも お節料理は外注ものに頼る所が多くなった。 それはどの家庭でも例外ではないだろう。 しかし、豆茶と巾着は 依然として我が家の 古くから伝わる味として健在である。 最近は豆を炒るのは私の役目だ。 フライパンの上に豆を敷き詰め ゆるゆると廻しながら 過ぎ行く一年を振り返る。 こんな時間があっても良いと思う。
by shige_keura
| 2009-01-04 22:43
| 食
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