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伝説の投球  -5-
               (9回裏1死満塁、石渡が打席に入る)
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ネットとは便利なもので
この伝説の場面を何回でも
繰り返し見られることが出来る。

最初に思ったのは
直接江夏には関係の無い
両軍監督の態度である。

守る広島の古葉監督は
観念したかのように
どっしりと構えている。
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”なるようにしかならない”の心境だ。

一方攻める西本監督
何故か浮き足立った采配だ。
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何度もベンチを出たり入ったり
さしもの名将も目の前にぶら下がった
勝利に心惑わされたのだろう。
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次に肌で感じるのは
江夏が打者、走者に対して
細心の注意を払っていると言う事だ。

しかし、それにしても
1塁走者平野の顔色から
スクイズを確信したとは思えないのだ。

むしろ、石渡には申し訳ないが
スクイズへの構えが
若干早かったのでは?
との思いだった。

しかし、江夏が外す直接の動機になったとは思えない。

では、どうして???何故????





石渡がボックスに入ったときから
場面を再生してみよう。

石渡としては
思っても見ない事態になったと思った。

佐々木がかたをつけると思いきや
三振に倒れ、
責任はすべて自分に降りかかってきた。

緊張は極度に達していた。

ここで、捕手の水沼は
中大後輩の石渡に”カマ”をかけた。

「おまえ、随分緊張してるなーー
 それじゃスクイズ失敗するぞ」

無言で固まっていた後輩の態度から
水沼は「どこかで来るな!スクイズが!!」
と、確信した。

その一方で、早く打者を追い込みたい誘惑に負けて
初球、二球目とストライクを取りにいった。

実に野球の駆け引きというもの、
難しいし、又、面白く深遠である。

そして、決定的な場面を
繰り返して見るうちに
おかしなことに気がついた。
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それは、捕手の水沼が
あたかもウエストを要求するかのように
江夏の投球と共に
立ち上がっているのである。
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サインはストライクゾーンのカーブ、
それなのに、何故に水沼は立ち上がったのか。
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どう見ても江夏のウエストを予期したかのように
準備に入っている。

ただ、このボール完璧なウエストとは言い難い。

何故ならばボールは
石渡のバットの下を通り過ぎている。
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何故、小技の上手い石渡が
バットに当てられなかったのだろう?

それは江夏がサインどおり
カーブの握りで放った為なのだ。

だから、通常のウエストボールではありえない動き、
即ちカーブの動きで曲がり落ちた為
バットに当てられなかったのだ。

逆に、もしもバッテリーのサインが
当初からウエストボールならば
バットに当てられる危険のある所に
江夏は投げはしない。

つまり、完全なウエストを投げられるような
状況では無かったのだ。

広島バッテリーにとっては
乾坤一擲、お互いの信頼に成り立つ
これ以上は考えられぬ
防御の最善手を放ったものなのだ。

さて、話は変わるが
1980年スポーツ誌、「Number」創刊号、
山際淳司氏の「江夏の21球」は
素晴らしいノンフィクションだった。

しかし、ただひとつの欠点は
捕手、水沼の話が聞けてない事だ。

ここで私が第二の影の主役と言う
水沼捕手が登場する。

彼が長い間の沈黙を破って
口を開いたのが
「江夏の21球をリードした男」に
纏められている。

彼は言う。

「あの時スクイズは警戒していたが
 早く2ストライクも欲しかった。

 だから、2球目のサインは
 ストライクになるカーブだった。

 スクイズの気配を嗅ぎ取っていましたから
 先を急ぎすぎたと言われても仕方がないですね。

 江夏さんが投球モーションに入ったとき
 3塁走者藤瀬が猛然とダッシュしてきたのが
 眼に入った。

 これはスクイズだ!!!

 サインはストライクゾーンのカーブ・・・・・

 ここはイチカバチ
 捕球体勢を高めにシフトしよう、

 江夏さんならば咄嗟に応えてくれるはずだ」

これで私の長年の疑問は氷解した。

恐らく、江夏さんは
外した理由を”語らない”のではなくて
”語れない”のだと思う。

つまり、彼は何故に外したのか
その理由をひとつに絞れないのではないだろうか。

この場面、江夏は全神経を
スクイズの危険信号を読み取ろうとしながら
投球モーションに入ったのだろう。

だから、1塁走者平野の顔色から
そして、背後に風の如く聞こえた
藤瀬の動きから異変の匂いを感じた。

そして、内角に構えるはずの水沼が
立ち上がった姿を見て
スクイズを確信したのだろう。

もう一度江夏の言葉を最後まで聞こう。

「何度も言いますが
 あれは私の意志で外したものです。
 
 そして、そこにたまたま水沼が
 構えてくれていたのです」

この場面、最初に動いたのは捕手の水沼、
投手の江夏を信頼しての判断だった。

水沼のこの動きにより
江夏のスクイズ警戒は
警報の段階から確信へと
レベルが上がったのだ。

それにしても
瞬時にして状況を理解し対応した
江夏もなんと言う男なのだろうか。

               (江夏、この回投じた21球目)
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1979年11月
時折小雨がグランドに降り注ぎ
カクテル光線に照らされた中
それぞれの意地と名誉をかけて
男たちのドラマが繰り広げられたのだ。
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これこそが本当のプロ野球なのだ。
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参考資料

・山際淳司  「江夏の21球」
・水沼四郎  「江夏の21球をリードした男」
・渡辺唯之  「勝負師語録」
・佐野正幸  「もうひとつの江夏の21球」
・You Tube 「動画、江夏の21球」
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by shige_keura | 2009-07-10 09:12 | スポーツ | Comments(2)
Commented by ENZOU at 2009-07-10 11:19 x
やー読み応えありました。
ありがとう。
筋書きのないドラマ、野球の醍醐味ですね。

サッカー音痴の私は、ファンもマスコミも監督の戦術、采配にやけに文句をつけるけど、野球はそれほどでないのはこの辺の違いなのかな
Commented by shige_keura at 2009-07-10 22:53
ENZOUさん、コメント有難うございました。

サッカーファンには怒られるでしょうが、スポーツの奥深さでいえば
これは野球の方が数倍面白いと思います。

他に面白そうなテーマが見つかったら又掘り返してみたいと思います。
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