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蓮と極楽
睡蓮と蓮は同じ”抽水植物、
即ち、水の底の土や泥に根を張って
水面或いは水上に
葉や花をつける植物だ。

睡蓮とは睡眠する蓮、
日中に花を開かせ
夕刻から夜に花を閉じる事が
その名前の由来である。

では、蓮が睡眠しないかと言うと
そんなことは無い。

蓮だって花を開いたり
閉じたりしているそうだ。

最も睡蓮ほど
規則正しいかどうかは分らぬが。

では、この両者
どこが違うのだろうか。

葉と花にひとつずつ
明快な違いがある。

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先ず、葉であるが
両者とも円形の葉を有するが
切り口の有る葉を持つのが睡蓮で
切り口が無いのが蓮である。
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花の見分け方は
もっと簡単だ。
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睡蓮の花は水面に咲くのに対し
蓮の花は水面より高く花を咲かせる。
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上野、不忍池の蓮の花、
丁度、今が盛りと聞いていたので
出かけたのが7月の最終日
31日の事だった。
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蓮の花を見ていると
どうしてもお寺を連想してしまう。

何故ならば、お寺に出かけると
よく目にするのが蓮の花だからだ。

お寺の池にはよく蓮の花が咲いているし
襖や屏風にも蓮の花が描かれ
更には阿弥陀様が座っているのも
蓮の花の上である。
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お釈迦様が誕生したインドの国花が
蓮の花で
神聖なる花とされている。

又、中国では蓮は君子の花とされ
極楽世界は蓮の池に咲く
蓮の花で彩られていると言われている。
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つまり、蓮は泥沼に生育しているが
この泥沼が五濁悪世の現世を意味している。

そして、その上に咲く
清らかな蓮が極楽を象徴しているのだ。
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極楽浄土のお釈迦様と蓮の花。
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ここから思い出されるのが
芥川龍之介の小説、
「蜘蛛の糸」である。

龍之介の筆力がどれほど凄いか!

幼い頃、「蜘蛛の糸」を読んで
少なからずのショックを
誰もが受けたに違いない。

主人公の極悪人カンダタが
地獄の血の海でもがく
おどろおどろした光景。

一本の蜘蛛の糸を辿って
懸命に極楽を目指すも
糸がプッツリと切れて
地獄に落ちて行ってしまう。

怖ろしいばかりの光景が
目の前に浮かびながら
むさぼるように読んだものだった。

そして、最後の文章が
一転して静寂が支配し
心に沁み渡るようだった。

芥川龍之介、「蜘蛛の糸」最後の文章

御釈迦様(おしゃかさま)は極楽の蓮池(はすいけ)のふちに立って、
この一部始終(しじゅう)をじっと見ていらっしゃいましたが、
やがて陀多(かんだた)が血の池の底へ石のように沈んでしまいますと、
悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。
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自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、
陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、
元の地獄へ落ちてしまったのが、
御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
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しかし極楽の蓮池の蓮は、
少しもそんな事には頓着(とんじゃく)致しません。
その玉のような白い花は、
御釈迦様の御足(おみあし)のまわりに、ゆらゆら萼(うてな)を動かして、
そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、
何とも云えない好(よ)い匂が、絶間(たえま)なくあたりへ溢(あふ)れて居ります。
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極楽も、もう午(ひる)に近くなったのでございましょう。
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by shige_keura | 2009-08-06 09:58 | | Comments(0)
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