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煙は悪魔の意のままか?
煙草の増税論議が
再度活発化している。

再度といったのは
小泉さんが首相末期の時、
「煙草は一箱、500円が妥当」と発言し
一挙に値上げに傾いた事があったからだ。

しかし、その後何も起こらず
今日ここに至っている。

世界の趨勢を観察すれば
遅くともあの時に(2006-7年)に
上げておくべきだったのだ。

2003年と2008年における
西欧主要国の煙草の値段と
比べてみよう。


           2003年      2008年
日本        270円       ほぼ変わらず
アメリカ      500         700
英国        800         ほぼ変わらず
フランス      350         600
イタリア      240         400
(シンガポール) 500         700

私は喫煙者に対し恨みは無い。

恨みは無いが
喫煙の害は医学的に証明されている。

勿論、スパスパ吸って
大酒飲んで長生きする人もいる。

更に、辛い禁煙を続けることで
ストレスが溜まって
体調を崩す喫煙家も居るという。

しかし、喫煙者だけでなく
副流煙が禁煙者に及ぼす害まで
立証されている現在
世界の趨勢は
煙草の蔓延を食い止める
方向に向っている。

あれだけ安かったイタリアでさえ
この5年ほどで
煙草の価格を倍近く上げている。

「値段を上げれば需要が減って
 税収が思ったほどに上がらない」

「煙草農家が悲鳴を上げる」

「JTが大打撃を受ける」

上記の論議は枝葉末節
健康に悪いものを
このまま放置させて良い訳は無い。





ところで、煙草というと
天才、芥川龍之介の
作品を思い出す。

「羅生門」、「杜子春」、「蜘蛛の糸」、「鼻」等
彼の作品は中学校当時の私を
大いに楽しませてくれた。

中でも、短編小説、「煙草と悪魔」は
一際心に残った作品だった。

一人の悪魔が
フランシスコ・ザビエルの随行者、
宣教師の一員に化けて
日本にやってくる。

彼はなにやら得体の知れない作物(実は煙草)を
畑で栽培し始める。

やがて、その作物は育ち
紫色の綺麗な花を咲かせた。

一人の牛商人が好奇心に駆られ
この作物は何だ?と尋ねると
作物の名前を当てたら
お前に全部上げるよ、と
答が返ってきた。

相手は人の良さそうな宣教師と油断した農民は
「よし、当てて見よう」と請合ってしまう。

ここで、正体を現した悪魔はこう言う。

「但し、3日以内に当らなかった場合は
 お前の命は貰った」

帽子を取った宣教師の頭に
ニョッキリとした悪魔の角を見た商人は
腰を抜かさんばかりに驚き恐怖に駆られた。

期限の晩のこと、
商人は最後の策を講じた。

それは牛を悪魔の畑に入れ
徹底的に荒らしまわらせたのだ。

心地よい眠りについた悪魔だが
この騒ぎに気がつき
寝ぼけた頭で、思わずこう叫んでしまった。

「畜生、何で俺様の大事な
 煙草畑を荒らしているんだ!!」

物陰から固唾を呑んで
様子を見ていた商人の顔に
ニッコリと笑みがこぼれた。

”そうか煙草か!!!”

こうして、商人は命が助かったばかりではなく
煙草という大きな財源を手に入れた。

龍之介は最後にこう結んでいる。

「人間はこうして煙草を手に入れた。
 しかし、悪魔は本当に
 この賭けに負けたのであろうか??」

龍之介は20代前半の若さの時
既に煙草の持つ
麻薬的な妖しい魔力に気がついて
この傑作短編を仕上げたのであろう。

今や、世界は徐々に
この悪魔の煙りを取り除こうとしている。

日本もこれに取り残されてはいけない。
by shige_keura | 2009-11-15 09:53 | その他
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