鎌倉二人旅
最後の目的地は腰越だ。 腰越と言えば 干物の”高清”である。 鯵にしても鯖にしても ここの干物は 身がふっくら、しっとり、 断然旨い! 今日は最もお気に入りのエボダイと たまにしか店頭に並ばない太刀魚を購入した。 その獲物が帰宅後 夕食を彩った事は言うまでもない。 さて、腰越での次なる目的は 名画の中の景色を確認することだった。 その名画とは 1963年に黒沢明が手掛けた 「天国と地獄」である。 (映画の中での見せ場のひとつ ここだけ白黒の映画がカラーとなる) 「生きる」、「羅生門」、「七人の侍」等 数々の傑作を世に出した黒沢明、 中でも最大の傑作が 「天国と地獄」だと私は思う。 原作はエド・マクベインの 人気シリーズ「87分署」のなかの ”キングの身代金”、 いわゆる誘拐事件物である。 それを、菊島隆三、小国英雄、久板栄二郎、 それに黒沢明のそうそうたる面々が 脚本を担当した。 そのことが、作品を単なる誘拐事件を追うだけでなく 当時の社会情勢をちりばめ 映画史に残る傑作に仕立て上げた。 本作品中、誘拐事件を解くひとつの鍵となるのが 誘拐され、無事保護された少年が描いた 一枚の絵なのである。 その絵には湘南の海と 太陽と富士山が描かれているのだが 何故か見えているはずの江ノ島が どこにも無いのである。 腰越の魚市場で ヒントを得た刑事は 江ノ島が島ではなく 陸続きに見えるポイントを見出すのだ。 その風景に見入っている刑事 その背後を江ノ電がガタン、ゴトンと通り過ぎて行く。 その音は、まさしく誘拐犯からの 電話から聞こえてきた かすかな電車音だったのだ。 こうして刑事達は 狡知に長けた誘拐犯を ジリジリと追い詰めて行く。 主人公の会社役員に扮した 三船敏郎も堂々としている。 しかし、この映画を盛り上げているのは 主任刑事、戸倉に扮した仲代達矢と 誘拐犯として鮮烈なデビューを果たした 山﨑務であることは間違いない。 特に戸倉刑事をして 「あいつは正真正銘の畜生だ!」と言わしめた 不気味にして極悪非道な誘拐犯を演じた山﨑務、 とんでもない天才俳優が現れたものだと 舌を巻いたものだった。 機会があれば 是非見て欲しい映画である。
by shige_keura
| 2009-12-12 13:01
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