そこは新緑の奈良公園、
風雅な離れの個室 料理旅館、”江戸三”の一室だ。 今から6,7年前 初めて訪れた奈良である。 昔から「京の”白粥”、大和の”茶粥”」の言葉通り 茶粥は奈良の名物である。 その名物を食さんものと 「江戸三」を訪れたのだ。 この店を選んだ理由はただひとつ 故池波正太郎師の 「食卓の情景」に紹介されていたからだ。 趣のある離れの個室が 新緑の中に点在し 心地よい雰囲気が漂っている。 ところが料理の記憶はまるで無い。 お酒も入り、身体も温まり 最後に待望の茶粥を頂いたのは覚えているが。 ただ、その味はというと サラッとした食感と ちょっと苦めのお茶の味、 ”ただそれだけよ”だったような気がする。 所詮、お粥なのだから。 1月25日の定期検査にて、 想定内とは言えポリープが見つかり あっという間に切除した。 自分の腸内の検査と切除、 その一部始終を 目の前のテレビで見られるのが なかなか興味深い。 しかも、痛くも痒くもないのだから 医学の進歩も極まれりである。 しかし、そうは言っても 2日間は腹六分、 お粥を食べるようにとのお達しを受けた。 毎食、毎食の白粥 ほぼ健康体の私にとって たまったものではない。 そこで飛び出した家内の一言。 「あの時奈良で買ったお茶が そのままになっているわ、 煮出して茶粥にしましょうか?」 「何、煮出して茶粥だと!! それだよ、それ、それ!!!」 家内の用意してくれた茶粥が その晩の食卓を飾ったのは言うまでもない。 煮出したお茶をもとに作る茶粥、 薄めの塩味としっかりした味、 そして渋い色が食欲を刺激する。 蕪をくりぬいた中に銀杏、椎茸、海老を詰めた蒸し物、 鶏の腿肉の塩焼き、 蕪の葉の炒め物、 茶粥との取り合わせもよく 腹六分を超えて八合目に到達してしまった。 俗に、「風が吹けば桶屋が儲かる」と言うが 今回は「ポリープを取れば茶粥が喰える」だった。 ご馳走様でした。
by shige_keura
| 2010-01-31 18:12
| 食
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