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危険な任務  -1-
好評ロングラン上映中の映画、「ハートロッカー」、
その主人公の任務に比べれば
私の経験した仕事など
まるで容易いものなのかもしれない。

何故なら、映画の主人公の職業は
テロリストの仕掛けた
爆弾処理係なのだから
これ以上危険な任務はない。

しかし、経験した時こそ違え
場所は同じイラクのバグダッド、
映画を見ているうちに
遠い昔の記憶が蘇ってきた。

それは1974年9月のこと。

長女が生れて1週間後に
中近東長期出張2ヶ月の命を受け
当時事務所のあった
レバノンのベイルートへと赴いた。

どうもこの会社は人使いが荒く
因みに二女の誕生の報せは出張の最中、
北の果て、フィンランドのヘルシンキで聞いた。

「仕事人間」とは口が腐っても言えないが
さりとて家庭の主としても完璧に落第亭主だ。

さて話を北から南に戻そう。

中東のオアシスと言われた頃のベイルートだ。
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出張に旅立つ前の先輩の言葉、
これがなんとも悪魔の囁きのように耳に響いた。

「おー、ベイルートか、いいなお前、
 あそこはエリザベス・テーラーが乞食しているぜ」

休日はゴルフに遺跡見学、
                (ベイルート郊外デルハミーエのゴルフ場)
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                (アンジャールの遺跡)
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                (上の遺跡を取り入れた10レバノンポンド紙幣)
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夜はカジノ、たまには妖しげなナイトクラブ。

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思いっきり楽しんでいた私
そのしっぺ返しのような任務を受けた。

「イラクのバグダッドへ行ってちょうだい」




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さて、その数日後、
夕闇迫るバグダッドの街角に
私はたった一人で佇んでいた。

頃は11月下旬、
ティグリス河からの風が
冷たく頬を刺す。

1974年と言えば
貧しいイラクに石油が発見!
国内外から石油に群がる人たちが集まってきていた。

宿泊していたホテルは
当然の事ながら部屋数が足りず
相部屋は当たり前
廊下にまで簡易ベッドを置く有様だった。

風光明媚、温暖心地よく
フランス料理、中華料理は勿論
日本料理屋もあるベイルートと比べると
このバグダッドはまさに天国と地獄であった。

目の前の幹線道路
先ほどからひっきりなしに
車の往来が絶えない。

ただ、その殆どの車が
もうもうたる黒煙を巻き上げて
気息奄々と走っていた。

そろそろ定刻となるのだが・・・
場所はここで間違いないのだろうか??

街が徐々に暗くなっていく。

不安が胸中をよぎった、
まさにそのとき、
珍しくもピカピカの黒い車がスーッと止まった。

中を覗きこむと
見覚えのある”あいつ”の顔は見えない。

運転手が後部座席を指差し
早く乗れとせかしている。

俺はこれに乗って良いのだろうか??

以下、明日に続く
by shige_keura | 2010-05-13 08:41 |
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