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真のライバル 7  (花束は訣別の予兆)
1949年7月29日の後楽園球場。

真夏の暑さも手伝って
満員の観客は興奮に心を高鳴らせていた。

日本敗戦、辛い戦後も4年を経て
漸く人々はプロ野球を楽しむ余裕が生れてきた。

それにしても、今日の熱狂は異常だ。

何故ならば多くのファンが待ちわびた
スーパースターの水原茂が
長いシベリアの抑留生活に耐え
懐かしの後楽園に復帰する日であったからだ。
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坊主刈り、頬はこけたものの
白い麻の背広に身を包んだ水原は
昔同様ダンディそのままだった。

球場のボルテージは最高潮に達した。

マウンドに立った水原はこう挨拶した。

「水原、ただ今戻ってまいりました・・・・・・
 感無量で話す言葉が見つかりません」
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短い言葉の中に
水原のその時の率直な気持ちが
ストレートに伝わってくる。

万雷の拍手の中
巨人軍を代表して
水原に花束を贈る男が登場した。
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彼こそ神宮であいまみえた三原脩
当時の巨人監督として采配を振るっていた。
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両者共に懐かしい気持ちと
共に野球が出来る喜びで一杯だった。

夢にも三原がプレゼントする花束と共に
半年後には巨人監督の座を
水原に譲ることなど
両者は夢にも思っていなかった。






水原が復帰して
夏が過ぎ秋口に入った頃
巨人選手に妙な空気が流れ始めた。

「折角帰ってきた水原さんを
 どうして監督は起用しないのだろう。
 あれでは水原さんが可哀相だ」

確かに満天下のファンもチームメートも
水原の颯爽としたプレーを期待した。

しかし、これは三原のある意味では思いやり、
更には合理主義者の彼としては
実力の伴なわぬ者は使わずだったであろう。

相手は長い捕虜生活を送った人間である。

いかに野球の申し子、水原としても
いきなり力を発揮することは出来ない。

この三原の考えは正しいと思う。

又、実際に水原も
三原の起用法に不満は漏らさなかった。

しかし、三原が何も説明しないこともあり
選手達の間に三原排斥の連判状が回り始めた。

同調したのは千葉、川崎、青田等の
どちらかと言えば血の気の多い大半の選手だった。

一方、当時から慎重居士の川上は
三原に同調した。

一方の当事者水原はどう思ったか。

彼は本心、面倒なことが起こったと事態を憂慮し、
今の体勢続行を希望した。

水原としてはここで悪者になりたくない。

いずれは人気のある自分に
監督の座が回ってくると目論んでいたからだ。

選手の大多数が三原に反旗を翻す事態を見た球団は
翌1950年の体制を決定した。

総監督、三原で監督が水原、
玉虫色と言えば玉虫色
両者の性格から考えてうまく行くはずが無い。

つけ加えて言うが
1949年の巨人は
三原体制で優勝していたのだ。

総監督と言っても名ばかり
何もすることがない三原は
ベンチにも入らず
日がな大好きな囲碁に興じていたと言う。

このとき三原の心には
はっきりと巨人憎しの炎が燃え上がった。

それは憎しみに近い情念であり
個人的に水原に向けられたものではないが
打倒巨人はそのまま水原を倒すことを意味していた。

こうして、三原は後ろ髪引かれることなく巨人を退団し
1951年より西鉄の監督に就任する。

世に名高い”巌流島の戦い”まであと5年、
水原としてはこの時点で
三原がそこまで巨人に対する炎を
たぎらせていたとは夢にも思っていなかった。

以下、明日に続く
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by shige_keura | 2010-04-13 08:57 | スポーツ | Comments(1)
Commented by enzou at 2010-04-13 14:13 x
苗のコラムでも言いたかったけれど、昔の組織・人は世間から何言われようと果断な決断(人事)をしてますね。
切れれるほうもいさぎがよいように感じます。
<< 真のライバル 8  (巌流島の戦い) 真のライバル 6  (蜜月時代) >>



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