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「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー
今日の主人公は本シリーズの中で
最も知名度の低い女優であり
本編の登場場面もそんなに多くはない。

しかしながら彼女の登場は印象的であり
役割も重要であった。

そのため、彼女の役名クレメンタインは
映画のオリジナルタイトルにもなっている。

「My darling Clementine」、
”愛しのクレメンタイン”
演ずるはキャシー・ダウンズ、
日本ばかりか本国アメリカでも
今では知る人は余りいないだろう。
「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー_c0135543_17352621.jpg

しかし、彼女はこの役ひとつで
映画史に名を残す事になったのだから
幸せといえば幸せだ。

キャシー・ダウンズのクレメンタインなくしては
この映画の成功は望めなかったであろう。
「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー_c0135543_1736447.jpg

ところが、この素敵なタイトルは
日本の愚かな配給会社により
「荒野の決闘」の名前で公開されてしまった。

これほど誤解を与える題名もない。

これでは観客は
ジョン・フォードの前作、「駅馬車」の
興奮と快感を期待して映画館に来るはずだ。

ところがこの映画には
ガンマンの対決、鮮やかな抜き打ち、
インディアンの来襲、颯爽とした騎兵隊の救援
そんなシーンは何処にも出てこない。

名匠、ジョン・フォードが描きたかったテーマ、
それは名保安官ワイアット・アープが
東部から来た貴婦人、クレメンタインに対して
ひそかに抱く淡い恋の物語なのである。

これでオリジナルタイトルの意味もハッキリする。

そして、それに見事に応えたのが
キャシー・ダウンズの存在だった。





何故、東部の貴婦人が
荒らくれ男のたむろする西部の町、
トゥームストンに来たのか?

それはかつての許婚、
名門の出でありながら死病の結核にとりつかれ
今は身を持ち崩したドグ・ホリデー(ヴィクター・マチュア好演)を追ってきたのである。

駅馬車を降りた彼女を出迎えたのが
偶々その場に居合わせたワイアット・アープだった。
「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー_c0135543_17391091.jpg

ヘンリー・フォンダ演ずるワープは
いっぺんでクレメンタインに好意以上の感情を抱くが
盟友ドグ・ホリデーと彼女の因縁を知ってはどうしようもない。
「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー_c0135543_17393969.jpg

ドグはクレメンタインを想い
彼女を東部に帰そうとするが聞き入れない。

このさなかに、西部史上有名な史実
通称、”OK牧場の決闘”が起こり
ドグは敵の凶弾を浴び死んでしまう。

ところが事実としては
この決闘でドグは射殺なんかされず
ピンピンと生き残っている。

ジョン・フォードは何故、
事実を曲げてドグは射殺された事としてしまうのか?

そうでもしないと西部劇史上名高いラストシーンが
成立しない事となってしまうからなのだ。

保安官を辞め、もとの牛追いとなって
町を去るワイアット・アープは
見送りに来たクレメンタインと短い会話をする。
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「貴女はこの町に残るんだって?」

「ええ、学校の先生として暮らしていきますわ」

「そうかい!今度牛を追ってこの町のそばを通る時には
 必ず寄ることにしよう。
 クレメンタイン! いい名前だ!!」

馬で去るワイアット・アープ
見送るクレメンタイン、
バックに流れるのは勿論、”愛しのクレメンタイン”。

心に染みる場面、
西部劇では「シェーン」と並ぶ
名ラストシーンである。
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最後にこれだけは言っておきたい事がある。

それはこの映画で
ジョン・フォードがついた二つ目の大嘘だ。

それは西部の歴史を調べると
どこにもクレメンタインの名前は出てこない。

すなわち、クレメンタインは架空の人物、
ここまでこの有名な史実を曲げて描いたのは
ジョン・フォードのみである。

そこにジョン・フォードが
この映画で描きたかった意図がはっきりと現われている。
「我が青春の女神たち」 -オーマイダーリン、オーマイダーリンー_c0135543_17374887.jpg

「Oh my darling Clementine」
by shige_keura | 2010-11-11 08:54 |
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