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”新しい波”の先駆者
9月12日、フランスの監督、
クロード・シャブロールが亡くなった、
享年80歳である。

彼はフランスの新たな映画の方向性、
即ち”ヌーベル・バーグ”の担い手として
ジャン・リュック・ゴダール、
フランソワ・トリュフォーと共に活躍した。

1959年はフランス映画界にとって
忘れられぬ年であるに違いない。

この年、奇しくも
1930年生れのシャブロールとゴダールが
「いとこ同士」と「勝手にしやがれ」、
32年生れのトリュフォーが
「大人は判ってくれない」を発表し
世の中をビックリさせた。

何故ならばその内容が
今までの映画が描く世界と変わっていたからだ。

主人公はいずれも精神的に満たされぬ若者達、
彼らは大人にとっては反社会的であり
無軌道であり反道徳的と看做された。

しかし、若者達にとっては
満たされぬ心の根っこには
子供達を理解しようとしない親がいたのだった。

このテーマは社会的に成熟した
ヨーロッパだからこそに思えた。

しかし、彼ら当時の若き監督が見習ったのは
一人のアメリカの監督だった。





その人の名前はニコラス・レイ
模範となった映画は「理由なき反抗」である。

この作品はたった3本の映画を残し
自動車事故で急逝した
孤高の天才俳優、ジェームス・ディーンの
1955年、第2作目のものである。

「理由なき反抗」の評価は
少なくともアメリカ、日本では
「エデンの東」と「ジャイアンツ」に比べ芳しくない。

しかしながら、フランスに限って言うと
「理由なき反抗」が最も評価されている。

その理由は、成熟した社会、富める国にありがちな
物質的豊かさの反面精神的貧しさの警鐘を
早くも鳴らし始めていたことにもよるのだろう。

そして、無論「理由なき反抗」のジミーが
最もジミーらしさを発揮したことにもある。

監督のニコラス・レイは
心底ジェームス・ディーンのことを気に入っていた、
気に入ると言うよりも”崇拝”と言った方が良いかも知れぬ。

この点は「エデンの東」のエリア・カザン、
「ジャイアンツ」のジョージ・スティーブンスと
大きく違うところである。

ニコラス・レイは「ジェームス・ディーン物語」を描こうと
自分自身で脚本を練り上げていった。

だからこそ、ジェームス・ディーンが扮する主人公、
名前をジムと言い、ジェイミーとも呼ばせている。

更には、この作品で登場する
大人の中で唯一ジムを理解する刑事を
レイという名前で登場させている。

即ち、ニコラス・レイとすれば
自分がジミーの最高の理解者と言いたかったのだろう。

しかしながら、3作品の中では
最も理屈抜きに面白い
或いは単純ともいえる「理由なき反抗」が
理屈っぽいフランス人に受けるとは
誠に面白い現象だとも思うのである。

フランスの今となっては一人の老監督の死が
天才俳優と彼の崇拝者の事を思い出させてくれた。
by shige_keura | 2010-09-13 21:01 |
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