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嫩(ふたば)の謎
下の画像は、山中湖周辺で
運が良ければ見ることが出来る野草である。

ひとつは「熊谷草」、袋状の唇弁が
源氏の武将、熊谷直実が背負った
母衣(ほろ)に似ている事が命名の由来だ。
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対するは「敦盛草」、
平家の若き貴公子、平敦盛に因んで名づけられている。
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白は源氏の旗印、
花自体も幾分がっしりしている事が
勇猛果敢な武将熊谷直実を思わせる。

平敦盛は紅顔の美少年、
平家の赤と優しい花が彼に相応しい。

二人は、「平家物語」における
「一の谷の合戦」の主役である。
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色鮮やかな鎧をまとった平家の侍(敦盛)を追う直実、
馬から引きずりおろして鎧を取れば
色白の若き美丈夫の顔に驚く。
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直実、実子の小次郎を思い浮かべ
首を刎ねるのを躊躇する。

「情けは無用!」と叫ぶ敦盛、躊躇する直実、
源氏の武将が駆け付ける。

もはやこれまで、と直実、
心に葛藤を抱いたまま敦盛の首を刎ねる。

この一件を軸に据え、芝居脚本を作ったのが
浄瑠璃の黄金時代を作ったと言われる並木宗輔だ。

彼は「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)と題して
直実夫婦、敦盛の母、そして、源義経等の人間模様を描いている。






3月5日、国立劇場で上演されている
「一谷嫩軍記」を興味深く観劇した。
嫩(ふたば)の謎_c0135543_9382329.jpg

何故なら、作者の大胆な脚色に驚きを覚えたからだ。

合戦に向かう、直実に義経は弁慶の書を渡す、
「一枝を伐らば一指を剪(き)るべし」。

顔色を変え愕然と戦場に赴く直実、
彼は主、義経の真意を読み取ったのだ。

即ち、平敦盛は平家の若大将ながら
天皇家の血筋を引いた若者、
決して殺すでは無い。

一指は一子に通ずる、
即ち自らの子を斬るべし!

芝居のハイライトは「熊谷陣屋」の幕。

義経による平敦盛の首実見、
そこには敦盛の母、お藤の方が悲嘆にくれ
直実の妻、相模が慰めている。

ところが、箱の中に入っている首級は?

見聞し、満足げに納得する、義経、
瞬時に立場が入れ替わった女性二人。

我が子、小次郎の首を見て
驚愕、悲嘆にくれる相模、
歓びを表わそうにも表わせぬお藤の方。

中村東蔵(お藤の方)、中村魁春(相模)、
二人の情感あふれる演技が見事だった。

心の動揺を抑え、出家を決意する直実、
静かに花道を下がる所で芝居は終わる。

「一谷嫩軍記」の嫩とは??

嫩は若葉、2枚の若い葉、
人間の幼い頃の意味。

即ち、平敦盛と直実の子、小次郎
14,5歳の少年二人の事だったのだ。
by shige_keura | 2012-03-07 17:07 |
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