最近、ますます家の周辺が賑わってきた。
その大きな理由が、 蔦屋(TSUTAYA)が開いた大規模なカルチャー・センターだ。 中でも、書籍の充実は素晴らしく、 時を忘れるほど居心地が良い。 書籍の上の階にDVDレンタルショップが出来た。 今まで渋谷に出向いていたのが 3,4分で希望の作品がレンタル可能となり 便利も便利、笑みがこぼれるばかりの嬉しさだ。 しかも、5月中旬以降末までは シニアレンタル無料のサービス!!! いつも以上に、短い距離の往復に精を出した。 その結果、毎晩の如くDVD鑑賞会となったのだが、 その中で、最も印象に残ったのが二人の名子役だった。 作品は黒澤明と三船敏郎コンビ最後の作品となった「赤ひげ」、 1965年製作の名作を当時邦画に魅力を感じてなかった私は、 何故か見落としていた。 3時間以上もの長編だが 決して冗長ではなく内容が濃い作品だ。 山本周五郎原作中のエピソードを 幾つか抜き出して筋は進む。 とにかく、出演俳優がもの凄い。 三船敏郎、加山雄三のコンビ以下、 山崎努、団玲子、桑野みゆき、根岸明美、香川京子、 土屋嘉男、江原達治、東野英次郎、杉村春子、柳永二郎、三井弘次、 藤原釜足、志村喬、笠智衆、田中絹代、西村晃、千葉信男、 内藤洋子、三津田健、藤山陽子、野村昭子、左卜全、渡辺篤、菅井きん、 沢村いき雄、常田富士男、佐田豊・・・・・・・・ 黒澤映画にお馴染みの面々に加え 小津、溝口両巨匠に可愛がられた 笠智衆、田中絹代を引っ張り出したあたり、 当時の黒澤明の天皇ぶりが見て取れる。 とんでもない俳優を集めたものだ。 女郎屋の憎々しげな、やりて女将にぴったりはまった 杉村春子は想定内とは言え実に巧みである。 「あれっ!!」っと、意外なほどの演技力を見せつけたのが、 狂女を演じた香川京子の凄い眼差しと、 男運に見放された女を演じた桑野みゆき、 淋しい肩、憂いを含んだ顔は 薄幸そのものの憐憫さを映し出していた。 当時の映画演劇界を代表する男女優のなか、 ひと際光り輝いていたのが二人の子役だった。 ひとりは、心を閉ざした少女「おとよ」を演じた二木てるみ。 3歳の時に黒澤明の大傑作、 「七人の侍」に出演していたのはダテじゃない。 主演の三船敏郎が彼女の才能に目を剥いて、 意味不明の言葉を吐いた。 「こりゃ、シャンシャンシャンだぜ、まったく!」 16歳の彼女は、その年のブルーリボン助演女優賞を 当時、最年少で受賞した。 もうひとりは「長次」を演じた頭師佳孝(当時10歳)、 貧困の家庭に生まれ、一家心中、 猛毒薬、「石見銀山」を飲まされてしまう。 一般的な子役は可愛さを振りまいて人気を取る。 しかし、この二人は全く違う、 圧倒的な演技力で観客を引きつける。 二人の天才子役が絡む場面は 見る人の胸をうつ。 作品完成後の試写会の席上、 杉村春子がしみじみと云った言葉がこれだ。 「あの子、(頭師佳孝)が全部さらっちゃったからねーー」 名優二人、三船と杉村は心底 二人の子役の類稀なる資質を見抜いていた。 これだけの演技力を備えた子役、 あれから半世紀以上も経つが現れていない。
by shige_keura
| 2012-06-09 09:06
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