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映画の中の酒  -酒に溺れた紳士-
かつて、「アメリカの良心」と呼ばれた大スターが居た。

その人の名前はゲイリー・クーパー
西部劇、戦争映画のヒ-ロでありながら
現代劇でも「魔天楼」、「オペラハット」に代表される
正義を貫く男を静かに演じてきた名優だ。
               (「摩天楼」でパトリシア・ニ-ルと)
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邪悪、背徳、裏切り、軽薄、下品、等々の言葉は無縁であり、
クーパーが映画の中で酒を煽る場面は浮かんでこない。

ワイラーの名作、「友情ある説得」でも
彼はクウエ-カー教徒なのでアルコールは御法度。
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代表作、「真昼の決闘」の保安官、ウィル・ケーンは
宿敵との決闘に備え、お酒を飲んでる余裕はどこにもない。
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娯楽西部劇、「ヴェラクルス」ではお酒は沢山出てくるが
ガブガブ飲んでいるのは相手役のバ-ト・ランカスターばかりである。
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ここに、紳士の代表格とされるクーパーが
唯一、酒に溺れ、ぐでんぐでんとなる映画がある。

しかも、彼の役は世界的な名うてのプレイボーイ、フランク・フラナガン、
ここまで言えば映画ファンは、
「あー、あの映画か」と思い浮かべるに違いない。

花のパリを舞台に
親娘ほど年のちがうアリア―ヌ、
演ずるはオードリー・ヘップバーンを相手に繰り広げられる
小粋なラブロマンス、「昼下がりの情事」である。
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監督はこういった映画はお手のもの
ハリウッドきっての才人、ビリー・ワイルダーだ。

ビリー・ワイルダーこそ唯一無二、
「アメリカの良心」を酷い二日酔いに追い込んだ男なのだ。



紳士の醜態は映画の後半に訪れる。

鼻もひっかけなかった小娘に
今や翻弄されるプレーボーイ。

「一体全体、あの小娘はなんだ?
 名前すら明かさずに、
 日が暮れるとさっさと帰ってしまう。
 遊びもしてなさそうなのに、喋ることは凄い、
 何人の男と付き合ってるんだ??
 この俺を馬鹿にしやがって、くそーー」

脇のテープレコーダーからは
小馬鹿にしたような彼女の声が聞こえてくる。
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「あら、フラナガンさん、大丈夫?お元気?
 貴方は私にとって13番目・・・・・・・
 違った、14番目のお友達、
 13番目は男性的なスイスのアルピニスト、
 その前がスペインの情熱的な闘牛士、
 11番目はフランスのド-ヴィルの億万長者、
 それから・・・・・、アッ、時間が無いわ、じゃーね、サヨナラ」

こんな時には、男は飲むしかない。

隣のリビングでは、フラナガお抱えのジプシー楽団が音楽を奏でる。

林立した酒びんを乗せたワゴンが
ふたつの部屋を行ったり来たり。

シャンパンが1本、2本空になる、
その次はブランデーにベルモット・・・・・
やけ酒の宴は留まるところを知らず。

気がつけばジプシー楽隊は部屋で大の字、
それでもフラナガンの気持ちは収まらない。
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二日酔いで割れそうな頭を抱え
フラナガンは私立探偵に助けを請う。

「変な娘の正体を探ってくれ!」

ところが、この探偵は何を隠そう、
小娘、アリア―ヌの父、演ずるは
プレーボーイでならしたモーリス・シュバリエ。
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こうして、急展開を見せた物語は
映画史上名高い、パリ駅の別れの場面へと進む。
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正体がばれたとは夢にも思わぬアリア―ヌ、
精一杯の強がりを言い続ける。
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汽車は煙を吐き、徐々に動き出していく。
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バックに流れるのは優雅な魅惑のワルツ、(ファシネーション)、
ゲイリー・クーパーとオードリー・ヘップバーン。

まさに魅惑の競演である。
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by shige_keura | 2013-02-21 09:32 | | Comments(0)
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