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優しさの中の批判
又しても邦題に引っかかったが、
映画は素晴らしかった!

オリジナルタイトル(英語)は”Philomena”(フィロミ-ナ)、
ジュディ・デンチ演ずる女主人公の名前だ。

この物語はノンフィクション小説をベースとしており
本のタイトルは”The Lost Child of Philomena Lee”、
直訳すれば「フィロミ-ナ・リーの行方不明の子」となる。
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これが邦題となると、「あなたを抱きしめる日まで」、
一体全体、何を意味しているかが分からない。

この邦題から受けるイメージは
日本人大衆受けするメロドラマとなる。

ところがところが、映画はメロドラマとは対極、
その背景には闇に包まれた哀しい歴史が横たわっている。

下手に映画化した場合、とんでもなく暗くなる危険性があるが、
卓越した脚本と絶妙なジュディー・デンチのキャラクターで
ほのぼのとした味わいが作品全体を包み込むこととなった。

その結果、屈指の名作として仕上がったと言って良いだろう。
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主人公、フィロミ-ナの相手役として登場するのが
元・BBCキャスターのマーティン(スティーブ・ク―ガン好演)であり、
彼こそが後に小説の執筆者となる、
マーティン・シックススミス氏であるのだ。

大詰めは修道院の一室、
主役二人が聖職者へ発する対極的な言葉が
この映画の言わばハイライトなのだ。

主人公のフィロミ-ナの言葉は「許します」、
一方、マーティンは「許さない」と断じる。

即ち執筆者となるマーティンが「許さぬ」と言っているように、
原作と映画の根底にあるのは
聖職関係者(カソリック)への痛烈な批判なのである。






2009年3月、時のアイルランド首相は
カソリックが作った、ある施設の存在を認め
そこで行われていた活動を謝罪した。
               (アイルランド首相の謝罪スピーチ、テレビ放映)
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そこは通称、「マグダレン・ランドリー」(Magdalene Laundries)と呼ばれ、
売春、婚外交渉等、貞節を失った女性を引き取る施設であった。

マグダレンの名前が娼婦から聖女となった
「マグダラのマリア」を意味することは
キリスト教に詳しい方ならばご存知の通りだ。
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問題は「マグダレン・ランドリー」の実態、
女性の保護、更生が目的と標榜する裏で
過酷な労働に加え非人間的な体験も彼女たちは味わうこととなった。

即ち、原因はともかくとして
自分の腹を痛めた愛しい我が子を
施設は外国の富豪(映画ではアメリカ)に売り渡してしまうのである。

ランドリーで働く女性たちは
高級車が玄関に着くたびに怯える。

何故なら、高級車の姿が現れるたびに
誰かの子供が居なくなるからだ。

悲劇の主人公、フィロミ-ナは
息子の50回目の誕生日に行方を探す旅に出る。

あとは、映画を観てのお楽しみ。

とにかく、欧米と日本では批判精神が全く異なることを
身にしみて味わうことになる作品だ。

欧米は過去の歴史を、対象が皇室であれ、
宗教であれ、国のリーダーであれ、
事実は事実として暴きだす、
その勇気には心底、感心する。

最後に、私が愚考する邦題候補を挙げておこう。

「フィロミ-ナの旅」、或いは「フィロミ-ナ、心の旅路」。
やはり駄目かーーーー???
by shige_keura | 2014-03-24 09:14 |
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