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風雪の金沢 -風にも負けず・・・-
今日の話は去年の続き。

「風にも負けず、雪にも霰にも負けず、
 ただひたすらに金沢の美味追求に奔走す」

金沢を訪問するたびに訪れる店がふたつある。

「よし村」、金沢の繁華街、片町の裏手、
大工町にある加賀料理の割烹だ。

大工町とは金沢藩の御大工衆がかつて住んでいた所で、
金沢には昔を偲ばせる町名が今も残っている。

近江町は近江商人が住み着いた場所で、
今は「近江町市場」として市民の台所の枠を超え、
全国にその名前を知られている。

石引町はお城の石垣を郊外の戸室山から切り出して
引きずって運んだ道に或るところからの名前だ。

尾張町は、藩祖・前田利家の出身地である
尾張商人を住まわせたところ。

その他、鱗町、長土塀町、主計町、東御影町、
等々味わいのある名前が今もなお古都・金沢に息づいている。
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「よし村」は厳冬の日本海の魚、
古くから伝わる投げ網(坂網猟)で捕えた鴨、
そして加賀野菜を揃えた名店である。
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それは10数年前の金沢で暮らしている時の事、
カウンターに座った私の前に近寄って来た御主人が小声で囁いた。

「今日は、良い“つぐみ”が手に入りましたよ」。
思わず、「御禁制ですか?」と聞いた私に
悪戯っぽく片目をつぶった親爺さんとは、
それ以来のお近づきとなった。

その御主人が急逝、
以来若い息子さんが古番頭、お母さん、
女房と共に店を切り盛りしている。
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この店の呼び物は長い巻紙に毛筆で書かれたメニュー、
先代の味わいのある字とは未だ差があるが
年々、息子さんの字にも成長の跡が見られるのが嬉しい。
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この店では刺身は食べず、
もっぱら火の通した食材を味わう。

その訳は、刺身が不味いのではなく、
生ものは鮨の名店・「千取」で味わう為である。

加賀を代表する料理、冶部煮(鴨肉、お麩、青野菜)と
蓮蒸し(蓮根のすり身、サトイモ、穴子)は外せない。
               (冶部煮)
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お勧めは鴨肉の焼きもの、
味わい深いソースと白菜繊切りと共に味わうのは
この店ならではの食べ方だ。
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加賀野菜と白子の天ぷら、
季節がら絶品の白子は鍋でも味わう。
               (加賀野菜と白子の天ぷら)
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料理のお伴は銘酒・手取川、
この地は、かつて織田と上杉の軍勢があいまみえた古戦場だ。

締めの常連、冷やした葛切りを
こくのある黒糖の蜜とともに流し込む。

喉越し実にさわやか、
火照った身体がすーっと鎮まり真に心地よい。







千取鮨の大旦那、吉田さんとのお付き合いも、
かれこれ15年は越えている。
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今は表の店は倅に任せ、
奥のお座敷で馴染みの客のみの接客に努めている。
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いつ来ても美味しい千取なのだが
ハイライトは12月中旬から1月中旬までの1カ月、
香箱蟹、ブリ、ノドグロ、アラが最も美味しく味わえる時だ。
               (香箱蟹)
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この四品は東京でも味わえることが出来るが、
当地で食べる味ときたら・・・・・絶品以外のなにものでもない。
               (ノドグロの塩焼き)
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ノドグロがテニスの錦織選手効果で
全国に名前を知られるようになったが、
アラについては意外と知っているようで知られていないのではないか。

ここ、金沢で食べるアラ(日本海)と
九州で鍋で名高いアラ(玄界灘)は全くの別物である。

九州のアラは別名クエであり、深海魚、ハタ科の魚、
一方北陸のアラは正式にはオキスズキと言うようにスズキ科の魚である。
              (クエ、ハタ科)
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スズキと深海魚のハタでは
聞いただけでもどちらが美味しいかはお分かりになると思う。
               (北陸のアラ、スズキ科)
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勿論、最後には大旦那の握る鮨の楽しみが残っている。

清冽な白山の雪解け水を使い
竈と薪で炊きあげた煌めくような銀シャリを
絶妙な握り具合に仕上げていく。
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窓越しには雪がうっすらと積もったお庭、赤い南天と緑の葉っぱ、
福光屋の純米酒・黒帯をじっくりと飲りながら、
幸せの時間がゆるりゆるりと過ぎてゆく。

「ブリとアラ、もう一丁、握りでお願いします」
by shige_keura | 2015-01-04 10:03 |
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