私が勝手に思っているスウェーデン出身三大女優最後の砦、
アニタ・エクバーグが1月11日逝去、 慎んでお悔やみ申し上げます。 享年83歳、長寿化の昨今ではまだまだの年齢に思えるが、 晩年は骨折の影響で歩くこともままならず 入院生活を余儀なくされていたとのことだ。 スウェーデン出身三大女優とは 彼女のほかは、グレタ・ガルボとイングリッド・バーグマンとなる。 しかしながら、アニタ・エクバーグの場合は知名度はともかくも、 映画の実績面では他の二人に大きく水を開けられている。 グレタ・ガルボ(1905-1990)は ハリウッドのサイレント時代からトーキー初期の伝説の大女優、 アカデミー賞ノミネート3回、死後、彼女の功績に対し特別名誉賞が贈られている。 17歳のとき、本格的に映画出演、その後、18年間で32作品に出演し、 今まさに絶頂期の35歳で突然引退し世間を驚かせた。 生涯独身を通し、引退以降は公の場に一切顔を見せなかったことが 彼女を殊更ミステリアスな存在に仕立て上げている。 イングリッド・バーグマン(1915-1982)、 言うまでもない絶世の美人女優の最右翼、 「カサブランカ」「凱旋門」「誰が為に鐘は鳴る」等の話題作で大女優の地位を確立した。 アカデミー賞受賞3回は彼女の誇るべき勲章である。 その一方で、イタリア人監督ロベルト・ロッセリーニとの許されぬ結婚で ハリウッドを長らく破門の憂き目にあい、 “恋多き女”のレッテルを貼られた苦渋の時期を味わった。 アニタ・エクバーグ(1931-2015)は ミス・ユニバースのスウェーデン代表となり、 その美貌と豊満な肉体が映画関係者の目にとまりハリウッドに渡った。 1953年にデビューするが観るべき価値のないコメディ作品の脇役か、 彼女の肉体を売りにする三流作品に終始した。 1956年、煽情的なポスターにつられて観た「熱砂の舞」にしても ポスターを超える作品ではなかった。 時に私は中学1年生、 思えば随分とませた餓鬼だったのだ。 同年、彼女は本人の役(アニタ・エクバーグ)としてある作品に出演した。 それが当時の人気コメディーシリーズ、 ジェリー・ルイスとディーン・マーティンの「底抜けのるかそるか」である。 ジェリー・ルイスは熱狂的なアニタ・エクバーグのファンに扮し、 彼女に会いたさの一念でハリウッド行きが一等賞のくじを買い占めて ディーン・マーティンと共にドタバタを繰り広げるお話であり、 底抜けシリーズの中ではレベル的に評価できる作品だった。 ここで不思議に思うのは、それまで駄作ばかり3作品しか出ていない彼女が ハリウッドを代表する人気女優として実名で登場してきたことだ。 そこに彼女に対して大女優の「大」の字を付けた所以が隠されている。 即ち、彼女は美しいだけではなく、 当時の女優としては並はずれた肉体の持ち主だったのである。 彼女の身長175センチを当時の有名女優と比較してみよう。 175センチ アニタ・エクバーグ 173センチ イングリッド・バーグマン 170センチ エヴァ・ガードナー、オードリー・ヘップバーン、ソフィア・ローレン 169センチ グレース・ケリー 168センチ ブリジット・バルドー 166センチ マリリン・モンロー 162センチ エリザベス・テーラー、ジ―ナ・ロロブリジ-タ 160センチ フランソワ―ズ・アルヌ-ル 157センチ ヴィヴィアン・リー 152センチ ナタリー・ウッド 一頭地を抜いた背の高さに加え、 スリーサイズが108-62-105、そして妖しげに男性を射抜く眼差し、 衝撃的な肉体・官能派女優の誕生だった。 彼女の並はずれたスケールは イタリアの名匠・フェデリコ・フェリーニを刺激し、 アニタ・エクバーグは名作・「甘い生活」のヒロインとして抜擢された。 ローマ上流社会の退廃的生活を描いた作品で、 アニタ・エクバーグは映画史に残る場面に登場した。 それが真夜中から明け方にかけて マルチェロ・マストロヤンニと共に過ごす“トレビの泉”のシーンである。 ローマの街の象徴の一つとも言えるトレビの泉で 恍惚の表情で水を浴びるアニタ・エクバーグ、 極端な言い方になるが、彼女の映画史の中で唯一無二の見せ場と言って良いのだろう。 大きな女、太った女性に弱いフェリーニは オムニバス「ボッカチオ70」ではアニタ・エクバークを巨大な看板に使っただけでなく、 ビルより大きな巨大な女性として登場させている。 映像としては面白かったが作品としてはフェリーニの中では駄作にほかならぬ。 今も続く人気シリーズ、「007/ジェームズ・ボンド」、 最高傑作「ロシアより愛をこめて」にアニタ・エクバーグは、 ここでも、壁に貼られた大きなポスターで登場している。 敵を狙撃せんと待ち受けるボンドとイスタンブール情報局長、 危険を察知した相手は窓からロープを伝って逃げようとする。 出口の窓が丁度アニタ・エクバーグの口の部分、 逃げようとした敵は一発の銃弾に葬られてしまう。 ここで、ボンドはさらりと一言、 「だから、女の口は危ないんだ」。 あの頃のボンド映画はちょっとしたセリフの味わいが良かった。 企画外れの大きさを売り物にしていたアニタ・エクバーグだが、 晩年の作品「インテルビスタ」ではアット驚く醜悪なメークアップで登場してきた。 彼女の真意は何処にあったのだろうか? 映画が好きで好きでたまらなかったのか? 大きさの次は奇怪なメーキャップで話題を拾おうとしたのか? 私にはアニタ・エクバーグと言う女優は スケール外れのミステリアスな存在だった。
by shige_keura
| 2015-01-17 10:24
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