「醍醐味」という言葉は、「本当の面白さ」「神髄」、
「深い味わい」等の意味で使われることは多くの人が知っている。 この言葉を聞くたびに思い出すのは 中学時代の某体育の教師である。 それは中学1年の時の事、 ハッキリとは思いだせぬが補修の時間に 件の先生が来て何やら面白くもない話を喋り始めた。 何かのスポーツの話だったと思うが 素晴らしいプレーについて紹介した後にこう言った。 「こういうことを世間では“ごだいみ”と言う」。 クラス全生徒、訂正するわけにもいかず 何となく気まずい時間が経過した。 彼に「ごだいみ先生」、「ごだいみ天皇」なる あだ名がつくまでに1日と掛からなかった。 さて、画像のチーズケーキは「チーズ・オムレット」の名前で 広島市に1974年創業したお菓子屋、 “バッケン・モーツアルト”が販売しているものである。 通常のチーズケーキとの違いは、 下部のスポンジケーキを取り除きチーズスフレだけを焼成、 お店の36年創業記念菓子として発売以来人気を博しているものなのだ。 案内文にはこう書いてある。 「古い仏典の中に醍醐味と言う言葉あり・・・・・・ 当店のチーズ・オムレットは日本の乳の歴史に思いをはせながら 自家製クリームチーズを創出し・・・・・」。 “日本の乳の歴史”、“醍醐味は仏典の言葉”????、 ここで私自身、醍醐味の言葉の由来を知らなかった事に気が付いた。 醍醐味とは仏教用語に由来し、 牛や羊の乳を精製した濃厚で甘味のある液汁を意味している。 仏教では乳を精製する5段階を「五味」と言う。 その5段階とは・乳・酪・生酥(しょうそ)・塾酥(じゅくそ)・醍醐。 醍醐は五味の中でも純粋で最高の味であることから 最上の教えとして仏教の教法に例えられた。 そこから現在の使われ方になっていった。 さて、このチーズ・オムレット、 醍醐のように純粋で最高の味かどうかは分からないが、 しっとりとした食感と上品なチーズの香りは 私がイメージしている広島とはだいぶ異なるものであったことを言い添えておこう。 余談になるが、五味の中の言葉を取り入れ1919年7月7日の発売以来、 今も根強い人気を誇っている商品がある。 それは、誰でもが知っている「カルピス」だ。 事の起こりはカルピス創業者・三島海雲がその昔、 モンゴルを訪れた時に遡る。 長く厳しい旅に疲れ果てた彼は 遊牧の民が好んで飲んでいた「乳酸」を飲んだことで体力が回復した。 帰国後、彼は乳酸飲料を自社製品として売り出した。 発売に際して彼は「五味」の中の言葉を サンスクリット語の権威に教えを受けた。 それによると、サンスクリット語では 「醍醐」はサンピル・マンダ、「熟酥」はサルピスとあった。 商品名の最初の二文字は カルシウムに由来した「カル」に決めていた三島海雲は 最上級の醍醐(サンピル・マンダ)を使おうとしたが 「カルピル」では商品名としての魅力に欠ける。 そこで2番手ではあっても「熟酥」のサルピスから うしろの2文字を頂戴し「カルピス」と命名したと言う。 カルピスは長きにわたる人気商品、 命名にかけた情熱が支えているに違いない。
by shige_keura
| 2015-01-22 23:19
| 食
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