還暦と言っても生れてからの歳ではなく、
女優になってから60年の還暦を迎えたのがシャーリー・マックレーン。 「シャーリー・マックレーン映画デビュー60周年記念作品」とされた 「トレヴィの泉で二度目の恋を」が公開中である。 オリジナルタイトルは「Elsa & Fred」、 シャーリー・マックレーン扮するエルザは74歳の独り暮らし。 イタリア映画の名作・「甘い生活」を代表する場面と言える トレヴィの泉でマルチェロ・マストロヤンニとの恋の語らいを夢見ている。 フラットの隣に80歳の偏屈な老人フレッド(クリストファー・プラマ-演)が越してきたことから 年老いた二人の恋の道行き物語の幕が上がる。 シャーリー・マックレーンのデビューは1955年、21歳の時、 アルフレッド・ヒッチコック監督の「ハリ-の災難」だった。 ヒッチコック作品としては珍しく不作で興行収入も芳しくなかった。 しかし、ヒッチコック自身この作品を気に入っているように、 私にとって非常に想い入れのある映画である。 その最大の理由がシャーリー・マクレーンにあった。 この映画はヒッチコック得意の「ハラハラ・ドキドキ」のサスペンスではなく 「クスクス」とした味わい、飄々たる殺人喜劇である。 そして、作品を盛り上げた最高殊勲者が デビューにして魅力満開のシャーリー・マックレーンだった。 1950年代のハリウッド、今まで居なかったタイプの女優と言う意味では オードリー・ヘップバーンと彼女が双璧だと思う。 オードリーの放つ「妖精の輝き」の魅力に対して シャ-リ-の魅力は何と形容したら良いのだろうか? とぼけた味わい、素朴な美しさ、親しみやすさ・・・・・・・、 結局は汚れを知らかのような、「無邪気さ」になるのだろうか。 断っておくが、「汚れを知らぬ」ではなく 「汚れを知らぬかのような」であり、両者は別物である。 その後、彼女はビリー・ワイルダー監督と ジャック・レモンとの絶妙なトライアングルで 「アパートの鍵貸します」(1960)「あなただけ今晩は」(1963)で 女優としての地位を確立していく。 私は彼女のベストスリーと聞かれれば躊躇なく上記3作品を挙げる。 1983年、「愛と追憶の日々」でシャーリーは念願のアカデミー賞を獲得したが、 この頃の彼女は大女優然としたものが滲み出ており、私の好みではなくなった。 以来、彼女の作品から遠ざかってしまった。 しかしながら「トレヴィの泉で二度目の恋」、 彼女は81歳にして昔の無邪気さを取り戻したように光輝いている。 そしてシャ-リ-の輝きに感化されたかのように 86歳の相手役クリストファー・プラマ-までもいぶし銀の光を放っている。 この人が「サウンド・オブ・ミュージック」の 謹厳だけで面白みのないトラップ大佐を演じた人かと思えるほど、 酸いも甘いも噛みわけた人生の熟達者を演じている。 シャ-リ-の無邪気な輝きに乗って 老人二人の掛け合いは限りなく楽しく ほのぼのとした気持ちにさせられた。 物語の展開は予想通り、 妙に感傷的にならず、さらりと幕が閉じる所が良い。 ハイライトで登場するローマの街並みも懐かしく、 心地よい97分を東急文化村で過ごした。
by shige_keura
| 2015-02-17 21:29
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