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薫風の心地よさ!!
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遂に念願のお芝居を観ることが出来た。
江戸時代の風情、市井の表情を生き生きと描いた舞台は
期待を超える素晴らしさだった。
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国立劇場3月の演目、「梅雨小袖昔八丈 -髪結新三-」である。
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本作品は坪内逍遥が「江戸歌舞伎の大問屋」と評した
河竹黙阿弥の代表作のひとつだ。

初演は明治6年(1873)、江戸の中村座。
黙阿弥が六代目・尾上菊五郎の為に書いた本作品は
歌舞伎の世話物代表作として多くの歌舞伎ファンに支持されてきた。

その一人が故・池波正太郎さんであり、
彼の随筆「味と映画の歳時記」、「昔の味」に
少年の頃に観たお芝居の様子が描かれている。
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池波さんの一篇を抜き取ってみよう。

「この芝居を初めて観たのは、まだ少年のころであったが、
 いうまでもなく新三は六代目・菊五郎で、
 歌舞伎座の客席に初夏の薫風が香る想いがした。
 房楊枝(ふさようじ:現代で言えば“歯ブラシ”)を頭へさし、
 広袖の手ぬぐい浴衣、高銀杏歯(たかいちょうば)の下駄を履いた新三は
 初鰹の片身を三分で買う。
 三分と言えば、あと一分で一両になるわけだから、
 現代の生活感覚の上からは五万円にも六万にもつくのだろう。

 ・・・・・・・・・・・江戸っ子と初鰹については
 くだくだと書きのべるまででもあるまい。
 南方から海をわたってくる鰹の群れは、
 薩南から土佐を経て紀州へ。
 さらに遠州灘をすぎ、伊豆半島へ懸かるころには脂ものって、
 初鰹のシュンということになる。・・・・」。

季節と食べ物が密接に庶民の生活に係っていた頃のお話だ。








梅・桜の候は過ぎて青葉の季節、
江戸の街には「鰹――、鰹!!」、
歯切れのよい魚屋の言葉が通り過ぎていた。

「こちとら江戸っ子でー、初鰹とくりゃー、
 女房を質に入れたって買うってもんよ!」。
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こんな勇ましいセリフが庶民の口から聞こえてきた。

まさに「目には青葉、山ホトトギス、初鰹」。
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国立劇場の外、紅白の梅は満開なれど風は肌寒い。
しかし舞台は新緑の候、爽やかな風が吹き抜けていた。
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髪結新三は気風の良い男前の小悪党、
ゆすりで金もうけを企む。

ところが新三は評判の狭客を
やっつけるほどの向こうっ気の強さがありながら
長屋の大家には手玉に取られる間抜けな人の良さも見せる。

憎めぬ悪党、薫風に負けぬ清々しさをも感じる新三を
初役・中村橋之助が魅力たっぷりに演じ挙げている。
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髪結新三、これは歌舞伎役者ならば誰もがやりたい役であり、
今までも多くの大看板が演じてきた。

六代目・菊五郎をはじめ先代の尾上松緑
十六世・市村羽左衛門の新三も名高い。
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平成の世、新三の白眉は若くして世を去った中村勘三郎。

この時集った役者は狭客源七・片岡仁左衛門、
白木屋の美人・お熊に坂東玉三郎、大家長兵衛が中村富十郎、
手代忠七・中村芝翫、下剃勝奴・市川染五郎、
垂涎の顔合わせである。
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勘三郎に続く三津五郎の死、
関東お江戸歌舞伎はまさに試練の時、
中村橋之助、市川染五郎、市川海老蔵等、
中堅の飛躍を願ってやまない。
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by shige_keura | 2015-03-07 18:07 | | Comments(0)
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