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伝説の狙撃手VS天才数学者
2014年のアカデミー賞レースを盛り上げた2本の傑作、「アメリカンスナイパー」と
「イミテーション・ゲーム  エニグマと天才数学者の秘密」を連続して鑑賞した。

前評判通りの秀作には違いないが、
そこにアメリカと英国のお国柄の違いも垣間見て非常に興味深かった。
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「アメリカンスナイパー」はイラク戦争に4回に渡り出征し、
米軍史上最多の160名を射殺した伝説の狙撃手、
クリス・カイルの人間像を精緻に描いている。
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イラクの反政府軍掃討の為に派遣されたアメリカ軍は
相手の巧妙な抵抗に苦戦を強いられる。

何故ならば、現場は反政府軍が立て籠っているだけではなく
地元一般市民も怯えながら生活している。

即ち、両者を見分けることは難しく、
一歩誤れば一般市民を犠牲にする危うさがつきまとう。

一方、アメリカ軍は相手からは簡単に敵として認識されるのだから
神経のすり減らし方も尋常ではない。

クリス・カイルはアメリカを、そして同胞を守るためには
女子供にまで銃を向けざるを得ない。

本質的には優しい父親、
クリスの精神は徐々に変調をきたしてゆく。
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監督は今やハリウッド最高の映画人と
誰もが認めるクリント・イーストウッド。

彼はアメリカ映画の本質・娯楽性を外すことなく、
クリス・カイルを通じて戦争を愛国的側面と
反戦的側面をも淡々と冷徹に捉えていく。

今年84歳となったイーストウッドだが
衰えを微塵と感じさせないエネルギーは驚異的である。

1992年、イーストウッドの大好きな西部劇「許されざる者」で
彼は念願のアカデミー監督賞を受賞した。

以下がイーストウッドの煌めくばかりの作品群と
キネマ旬報の年度評価(ベストテン)を挙げよう。

1992年 「許されざる者」 1位
1995年 「マディソン郡の橋」 3位
2000年 「スペース・カウボーイ」 1位
2003年 「ミスティック・リバー」 1位
2004年 「ミリオンダラー・ベイビー」 1位
2006年 「父親たちの星条旗」 1位 「硫黄島からの手紙」 2位
2008年 「グラントリノ」 1位 「チェンジリング」 3位
2009年 「インビクタス/負けざる者たち」 2位
2011年 「J・エドガー」 8位
2014年 「ジャージーボーイズ」 1位
2015年 「アメリカンスナイパー」 ?


2014年「ジャージーボーイズ」と
「アメリカンスナイパー」の2作品を手掛け
健在ぶりを改めて証明したクリント・イーストウッド、
今後の活躍が楽しみである。








恐らく本年のキネマ旬報第1位を
「アメリカンスナイパー」と争うことになると思われるのが
「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」だ。
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「エニグマ」とは第2次大戦中、
ドイツが開発した解読不可能とみられた暗号機。

統計的に判断すると、解読には天文学的時間が掛かる暗号を
猶予1カ月で挑み、解き明かしてみせたのが
実在の天才数学者・アラン・チューリングである。

彼の頭脳のおかげで
大戦の終結は2年早まったとされている。

にもかかわらず、チューリングの名前は
50年間歴史の片隅に埋もれてきた。
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それは彼が当時マイノリティとして罰せられた
犯罪者の汚名を着せられたことにある。

その罪は「同性愛者」、
彼は1952年逮捕され、ホルモン療法を受けたことで
1954年には42歳の若さで世を去ってしまう。

2009年、時の首相・ブラウンは
本件を公式に謝罪したことで、
漸くチューリングの功績が認められることとなった。

監督はノルウェー人のモルテン・ティルドラムなのだが、
本作にはイギリス的な味わいが色濃く出ている。

それはアメリカ映画が持つ強い娯楽性とは異なった
ヒーローになるべき人物が受けた思っても見ない苦悩と
世間から受けた惨い仕打ちと言えよう。

それが端的に現れるのが暗号解読の瞬間に待ち受ける次なる難問である。

これを言うと味なくなるので言わない方が良い。

そしてヒーローとなるべき天才が
時代の波に押し流されてゆく様が哀しい。

とにもかくにもチューリングなければ
コンピューターの出現が大幅に遅れたとも言われている。

今はITの世の中、その驚くべき進化の過程で
歴史に埋もれていた天才数学者が居た事を知るだけでも
大きな価値がある映画だと思う。

最後にオリジナルタイトル、
「The Imitation Game」について説明しよう。

イミテーション・ゲームは別名チューリング・テストと呼ばれ。
1950年、アラン・チューリングの論文の中で紹介されたもの。

テストの目的は、或る機械が知的であるかどうか
即ち人工頭脳を持っているかを判定する為のものである。

論文発表後、半世紀以上経った2014年、
ロンドンのテストの場に13歳の天才チェス少年の設定で参加した
ロシアのスーパー・コンピューターが
30%の確率で審査員に人間と間違えられて
史上初めてテストに合格したという。
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by shige_keura | 2015-04-16 23:01 | | Comments(0)
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