この画像の果物は何か?
お分かりいただけるだろうか?? 色、形から柑橘類であることは間違いないが 西欧では「ビターオレンジ」、苦いオレンジと言われるように、 直接食べるのには適さない。 従って、マーマレードとか調味料に使われる。 しかし、奥に見える黄色い柚子と比べると 随分と大きい。 次なるヒントは、この果実のユニーク性にある。 すなわち、冬になると実は黄熟するが、 そのまま放っておくと春には再び緑色になり 数年は枝から落ちない。 まだ分からないとなると・・・・・、 さて、このヒントでおおよその見当がつくはずだ。 この果物は日本のお正月になると多くのご家庭で利用される。 「そうです、ダイダイです」。 ダイダイが青から黄色、そしてまた青に、 つまり家も代々(ダイダイ)続いていくという願いを込めて 正月の鏡餅の上にうやうやしく鎮座しているのだ。 家内の友人から頂いた立派なダイダイ、 先日農家から購入した 小ぶりの柚子と比べるとひと際その大きさが目立つ。 さて、これをどのように活用しようか? 鍋物の調味料のほかに、何か良い使い道は・・・??? と頭を巡らせたところで思いついたのは、 夏から冷蔵庫に放置されている「ズブロッカ」の存在だ。 「ズブロッカ」(ZUBROWKA)とは ポーランドで作られているウオッカの仲間のブランド名である。 確か、冷蔵庫の奴は 家内がポーランド旅行をした時に お土産として持ち帰ったものだ。 強い酒、ズブロッカにダイダイ、 なんとなく面白い取り合わせだが、 一体、ズブロッカの正体は何なのだ? ウオッカとの繋がりはいかなるものがあるのだろうか? この機会にウオッカとズブロッカについて勉強してみよう。 ウオッカが西欧で定着したのは14世紀のころ、 強烈な匂いを放つため、当初は消毒用アルコールとして用いられた。 その後、改良が加えられ飲み物としても利用されたが、 まだ残る匂いに加えてアルコール度の高さから 「焼けるように熱い酒」(ゴシャウカ)と呼ばれた。 そのため、ストレートで飲むよりも 果実ジュースで割って飲まれていることが多い。 ロシアではウオッカと言うと蒸留酒一般、 例えば日本のウイスキー、ブランデー、焼酎等を意味している。 ポーランドではウオッカのことは「ヴ-トゥカ」と呼び、 「ズブロッカ」はその中の代表的なブランドである。 解説書をそのまま書いてみる。 「ズブロッカとはポーランドの世界遺産である “ビャウォヴィエジャの森”に自生しているイネ科の植物、 バイソン・グラスをウオッカに漬け込んだアルコール飲料である」。 ここで新たな疑問が出てきた。 バイソンとは野牛だが「バイソン・グラス」て何だ? 世界遺産の森、ビャウォヴィエジャには 今でも400頭のバイソン(野牛)が生活していて、 その地帯だけにしか生えていないイネ科の草は バイソンにとっての大好物なのである。 (ズブロッカに漬け込んであるバイソン・グラス) バイソン・グラスはポーランド語では「ジュブルフカ」 英国では「ホーリー・グラス」(HOLY GRASS)と言う。 すなわち、森に生息しているバイソン(野牛)は 聖なる牛(ジュブル)とみなされているからなのだ。 徐々に「ズブロッカ」の正体が現れてきたが、 それでは何故、バイソン・グラスを漬け込むかに話を移そう。 バイソン・グラスに含まれている成分 「クマリン」の香りに秘密がある。 バイソン・グラスをウオッカに漬け込むと クマリン成分の働きでいとも芳しい香りがするのだ。 そして面白いことに、この香りは 日本の季節の和菓子に含まれているお馴染みの香りなのだ。 その和菓子とは「桜餅」である。 誰でもがその香りを覚えておられるだろう。 「桜餅」を食べるときに菓子をくるんだ葉から漂う香りを。 冷蔵庫の冷やしたズブロッカの蓋を開けると 馥郁とした桜餅の香りが漂ってくる。 ポーランドの伝統的な飲み物に欠かせない聖なる牛と、 日本の象徴ともいうべき桜がこうして繋がった。 ここにお正月を彩る、 めでたいダイダイのエキスをたっぷりと入れて飲む。 好みによって、サン・ペルグリーノ(炭酸水)を入れても良し。 アルコール度の高い男の酒、 「ズブロッカ」のダイダイ割り、 実に新春に相応しい御目出度い飲み物だ。
by shige_keura
| 2016-01-22 12:45
| 食
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