ここ恵比寿のガーデンプレイスに
ひと際目を引く白亜の建物が シャトー・レストラン「ジョエル・ロブション」である。 オーナーのジョエル・ロブションはフレンチの神様、 或いは皇帝の異名を持つ男 世界各国に彼の名前を冠する店を展開し、 獲得しているミシェランの星は全部で28に及ぶ。 滅多なことでは行けない場所なのだが 娘二人からのプレゼントを貰った。 なんと、「ピエール・ロブション ラ・ターブル」の昼食招待券だ! 平日の昼間にもかかわらず広い部屋の席は8割がた埋まっている。 男女比は・・・・・・、数えてみたら男性は私を含めてたった3人だった。 フランスパンにオリーブ・オイルが運ばれた時の 係りの人との会話である。 「最近はフレンチもオリーブオイルが多くなりましたね」 「はい・・ですが、バターが宜しかったら持ってきますので仰ってください。 お客様はフレンチだとどのようなお店に行かれるんですか?」 「そんな、度々行ってるわけじゃないけれど、 最近のフレンチは随分とあっさりとした味が多いですよね」 「そうなんです。今や世界的にヘルシー志向、 ここも、本家フランス・ロブションの流れを汲んで ソースがあっさり目になってきましてね。 やはり、ご本家には逆らえないですから・・・・、 その昔の濃厚なソースが懐かしいのではないのですか?」 ロブションのラベルが貼られた赤ワインで オリーブに浸したパンを食べると 残念ながらもうひとつ物足らない。 あらためて頼んだ発酵バター!! これが実にフランスパンとワインにピタリとはまる。 素材の良さをできるだけそのまま生かす イタリアンにはオリーブオイルが良い。 何故なら、ここでバターを使っては 素材の良さを消してしまうからだ。 一方、フレンチの場合の決め手はソースなのだから、 バターと生クリームは欠かせないことになる。 フランスのバゲットにはバター、 イタリアの素朴なパンにはオリーブオイルが絶対だ。 本日のメインは久しぶりの「ホロホロ鳥」、 日本はともかくも、欧州では昔から珍重された食材だ。 なかなか味が奥深く、美味しかったのだが、 脇に添えてあったジャガイモのピュレが話題をさらった。 ジャガイモのピュレ、手っ取り早く言えばマッシュポテトなのだが、 一口食べてみて驚いた。 これこそがかつての料理界の王者として君臨していた フランス料理の濃厚なる味であった。 先ほどの係りの人と目があったので手招きしてこう言った。 「このピュレは昔のレシピそのままなんじゃないですか?」 「お分かりですか、そうなんですよ。 これだけはロブション伝統の味を保っています。 濃厚でしょう、何しろ、バターとジャガイモを1対1の比率ですので、 塩分はバターに十分含まれているので加えていません」。 バターとジャガイモの分量が半々!!! それはそれは、こってり濃厚で美味しい筈である。 フレンチ料理界に君臨する帝王ロブションは言う。 「私が最初に星を三つ獲得した決め手は ジャガイモのピュレにあると思う」。 フランスにジャガイモが普及したのがフランス革命直前、 農学者であるオーギュスタン・パルマンティエの尽力に因るものだった。 1786年、初めてジャガイモの花が咲いた時に 彼は花束にしてベルサイユ宮殿に駆けつけルイ16世に捧げた。 そのとき、マリー・アントワネットは 結い上げた髪にジャガイモの花一輪飾りにしたと伝えられている。 たかが「マッシュポテト」されど「マッシュポテト」なのだ。 「しかし、このピュレ(マッシュポテト)の美味さはどうだ!!」 ジャガイモとバターの量が半々と分かったとしても この絹のような滑らかさは到底真似できっこない。
by shige_keura
| 2016-02-22 08:40
| 食
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