1962年、「奇跡の人」でアカデミー助演女優賞を得たパティ・デュークが亡くなった。
享年70歳、慎んでお悔やみを申し上げます。 「奇跡の人」は生後2歳の時の病気がもとで 目が見えず、音が聞こえず、言葉も喋れない、 三重苦を背負いながらも教育家、社会福祉活動家として 世界的に知られたヘレン・ケラーの子供時代を描いた作品だ。 「奇跡の人」のオリジナルタイトルは”The Miracle Worker“。 このタイトルが示すように、作品の主人公はヘレン・ケラーというよりも、 粘り強く彼女の面倒を見た家庭教師のアニー・サリバンである。 この映画は監督賞のほかに、二つの女優賞を獲得するが、 主演女優賞はアニー・サリバンを演じたアン・バンクロフトが獲得し ヘレン・ケラーを演じた当時16歳のパティ・デュークは助演女優賞を得た。 この作品は地味な映画ではあるが 絶望の淵で荒れ狂う一人の少女と 強い信念を持って更生に導く家庭教師の関係が 赤裸々に語られていく迫真のドラマだった。 特に井戸の水を手で受けたヘレン・ケラーが ”water”と叫ぶ場面は観る人すべてに大きな感動を与えた。 ヘレン・ケラーを演じたパティ・デュークは1946年の生まれ、 父がアルコール依存症、母が鬱病と不幸な子供時代を送った。 のちに8歳の時に里子に出されるが、 そこで子役としての才能が見いだされ 1959年、13歳の時にブロードウエイの舞台で ”The Miracle Worker“のヘレン・ケラーを演じ大きな注目を集めた。 恐らく、パティ・デュークが幼いころに経験した不遇が ヘレン・ケラーを演じるに大きなプラス材料として働いたのだと思う。 舞台劇のヒットを受けて1962年に映画化されたときに 彼女は16歳にしてアカデミー助演女優賞を獲得した。 これは、その後テータム・オニール(10歳で助演賞獲得)に破られるまで 最年少アカデミー賞獲得記録だった。 その後、パティ・デュークは1979年のときにテレビ映画でリメイクされた ”The Miracle Worker“で家庭教師役のアニー・サリバンを演じた。 従って、パティ・デュークこそ正真正銘の「奇跡の人」、 ”The Miracle Worker”なのである。 彼女はテレビのヒットバラエティ「パティ・デュークショー」で日本にも紹介されるが、 二役を演じコメディ・タッチの番組から ヘレン・ケラーの面影を見出すのは難しかった。 ここで実在したヘレン・ケラーとアニー・サリバンを紹介しよう。 三重苦を抱えたヘレン・ケラーの両親は 当時、聴覚障害児の研究に当たっていた グラハム・ベル(電話の発明者)に相談した。 その結果、家庭教師として派遣されたのが 自らも視覚に問題を抱えた経験があるアニー・サリバンだった。 彼女は自らの体験をもとに粘り強くヘレン・ケラーに接し 「しつけ」「指文字」を教え込みつつ彼女の口から言葉が発せられる努力を重ねた。 (当時のヘレン・ケラーとアニー・サリバン) ヘレン・ケラーは後年、障害を克服し教育者としてなっていくが その陰で、アニー・サリバンの50年にも及ぶ指導があったのである。 アニー・サリバンは1936年、ヘレン・ケラーに看取られ 70歳にしてこの世を去った。 又、ヘレン・ケラーは1968年88歳で天寿を全う、 その間、2度の来日を果たし、教育家福祉家としての講演を行った。 (パティ・デュークとヘレン・ケラー) 映画「奇跡の人」は今や、多くの人からは忘れ去られた存在となっているが、 現在の教育の在り方、躾の問題が取りざたされる中で、 もういちど多くの方々に観てもらいたい作品だと思う。
by shige_keura
| 2016-03-30 10:56
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