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早春の熱海 ~熱海のローマ風呂~
昔々の事だが、そのころ熱海と言うと
何故か大野屋のローマ風呂が有名だったような記憶がある。

それは中学校の頃だと思うが、
偶々、大野屋のローマ風呂に入ってみた所、
普通の大浴場で拍子抜けしたことを覚えている。

さて、熱海は気候温暖にして良質の温泉が豊富とくれば
古くから多くの実業家、政治家等の別荘が軒を連ねていた。

中でも三大別荘と言われたのが
岩崎弥太郎の「岩崎別荘」(現在は非公開)、住友別荘(現存せず)に並び
唯一見学できるのがここ「起雲閣」である。

この別荘の特徴は時代と共に持ち主が替り、
その都度新たな増改築を行っているので
大正・昭和ロマンの香り豊かさを和洋折衷の建物に
たっぷりと味わえるところである。

この建物が最初に出来たのが大正9年(1919)、
持ち主は当時海運王と言われた内田信也が
母の静養のための別荘として新築したものだ。
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このときは純粋の和風建築であり、
それは薬医門の名前の表門(鎌倉・室町時代の武家・公家屋敷に使われた様式)や
麒麟の名前が付けられた凛とした佇まいの和室に見てとれる。
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尚、和室の壁の特徴的な群青色は
後に旅館となった時に、
持ち主の石川県出身の桜井兵五郎によって手が加えられたものだ。

桜井兵五郎は当時、石川県、金沢郊外の湯涌温泉に
東洋一と謳われた「白雲楼」ホテルの持ち主として名高い人物である。

               (金沢市郊外、湯涌温泉にあった白雲楼ホテル)
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10年ほど前に金沢に暮らしていた頃、二、三度訪れた折、
今や廃墟同然となった「白雲楼」を見て残念な想いをしたものだった。

話を「起雲閣」に戻そう。

時は大正14年(1925)、持ち主が変わった。

新たな持ち主は青山にある「根津美術館」で有名な根津嘉一郎、
彼は政治家として東武鉄道の社長等、実業家としても名を馳せた人物だった。
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根津の時代に「起雲閣」は洋風の味付けを加えていき、
三代目の持ち主で旅館として活用した
桜井兵五郎の手で、よりスケールを増していった。
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この時代にここで筆を執った文豪は
山本有三、志賀直哉、太宰治、舟橋聖一、谷崎潤一郎、
三島由紀夫等枚挙にいとまがないほどだ。
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そして、舟橋聖一が離れの「孔雀の間」で執筆した「雪夫人絵図」は
日本が誇る巨匠、溝口健二の手で映画化されるときに、
ここの洋館にあるローマ風呂を使って撮影された。
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出演は上原謙、木暮実千代、久我美子等々で、
由緒正しき家柄の久我美子の入浴シーンは特に話題を呼んだものだった。
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このローマ風呂は肌触りやすべり止めを考慮して
床は木製のタイルを使っているのだが、
一見したところ石と見まごうほど精巧に造られている。
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「起雲閣」のローマ風呂は
中学時代に見た大野屋とは比較にならぬほどの質感の高さを誇示していた。
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by shige_keura | 2017-01-27 13:53 | | Comments(0)
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