ピカソが紫陽花の絵を描いた事ではない。
6月15日、梅雨の合間の晴れの日、 暑さを感じるが、時折涼やかな風が吹き抜けていく。 ここは高級住宅地と言えば田園調布、 お馴染みの並木道を洒落た邸宅を見ながら進むと宝来公園。 そこを右に入ってすぐの所に本日の目的地が現れる。 福岡に続き「みぞえギャラリー」が、 ここ田園調布にオープンしてから5年を記念して 「ピカソ、その芸術と素顔」と題した特別展示が行われている。 瀟洒な日本家屋は数十年前に一代で巨億の財産を築きながらも 波乱万丈な生涯を送った横井英樹氏が建てたと伝わっている。 入館無料ながら訪れる人の数は平日の為か多くないので ゆるゆると天才の芸術2点を鑑賞した。 ひとつはピカソが没する1年前(1972年)に描いた「男の顔」、 そしてゲルニカ空爆の前日に完成した「静物」だ。 ゲルニカ空爆とは、 スペインが右派と左派に分かれて内戦に突入した最中、 フランコ将軍と手を組んだドイツ空軍が 1937年4月26日北部バスク地方の最古の町 ゲルニカを徹底的に破壊したものである。 悲劇の一報をパリで聞いたピカソは パリ万博の壁画に当初の予定を変更してゲルニカの悲劇を描く事を決心し 3.5メートル×7.8メートルの大作を1か月余りで完成させた。 ゲルニカの壁画はむごたらしい惨状を ピカソ独特のタッチで描き彼の傑作として 後世に伝わることとなっていった。 ここ、田園調布ギャラリーで見る「静物」は ゲルニカの悲劇の前日を表すかのような 「嵐の前の静けさ」の雰囲気が伝わってきた。 展示のもうひとつのテーマ、「素顔」は ピカソの晩年に家族のように寄り添うように暮らしたカメラマン、 ロベルト・オテロの数十にも及ぶ作品が展示されていた。 そこには娘に捧げるピカソの愛情に満ちた表情、 それとは対照的なスピーチに臨む前の ピカソと関係者の緊張の糸が張りつめたかのような写真が印象的だった。 日本庭園を見ながらお茶に羊羹のサービスを満喫しギャラリーを出る。 目的は無く足の向くまま坂を上り下りして 多摩堤通りを丸子橋を目標に進む。 陽の照りつける中の散歩、 疲労感が増す頃に思い出したのが 多摩川台公園の紫陽花が見ごろだと言うことだった。 公園内にはご同輩がスケッチをしたり写真を撮ったりと賑やかな事。 紫陽花の種類も昔とは比べ物にならぬほど多くなり目移りがするが、 私は定番のブルーのものが最も好ましく思える。 梅雨の合間の晴天の一日、 ピカソと紫陽花で充実した気分となった。
by shige_keura
| 2017-06-23 09:51
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