鬼平犯科帳、何回読み返しても面白い。
その理由は幾つもあるだろうが 個性溢れる密偵の登場も 大きな要素のひとつだと思う。 鬼平の手足となって大活躍する密偵、 中でも、相模の彦十の存在感が際立っている。 長谷川平蔵の若き日 無頼と放埓を極めた毎日を共にし 放蕩三昧の生活を送った取り巻きだ。 だから、今でも二人だけになると ”彦”、”銕ッあん”と気安く呼び合う仲だ。 この彦十が居候を決め込んでいるのが 本所の居酒屋、”五鉄”である。 ”五鉄”の二階の座敷には 彦十を初め密偵達がたむろしている。 そして、時には平蔵も加わり 車座となって話に興じ 盃を酌み交わしている。 真ん中にはぐつぐつと煮えている鍋、 勿論、”五鉄”名物の”軍鶏鍋”である。 鬼平犯科帳には毎度お馴染みの如く 登場する”五鉄”であるが 軍鶏鍋に関する描写は極めて少ない。 しかしながら、短い描写、 「底冷えの日が続くこの頃 入れこみの座敷には 早くから客が詰めかけており 軍鶏を煮る鉄鍋の熱気が立ち込めている」 これだけの描写でありながら 当時の江戸庶民の生活と 軍鶏鍋を囲む賑わいの情景が浮かび上がってくる。 1月某日、冷蔵庫の中には 新橋は鶏の名店、”加賀屋”の軍鶏が お呼びを今か今かと待っている。 更には到来ものの下仁田ネギ、 新鮮な芹、春菊もある。 勿論、絞りたての生酒も用意万端だ。 東京はここのところ晴天続きだが 冬型配置で夜の冷え込みはきつい。 まさに、軍鶏鍋をつつくには これ以上ないような条件が揃った。 取り出したる軍鶏肉、 プリプリとしてはち切れんばかり! ガラで取ったスープを鍋にはり 時間の掛かる下仁田ネギから順次並べていく。 ぐつぐつと煮立つ間 先ずは一献!! 軍鶏鍋には色模様の入った 徳利、猪口は似つかわしくない。 ここは、素焼き、土の匂いのする 素朴な盃で飲ろうじゃないか!! 常温の酒を飲ったあとには 熱々の軍鶏肉に豆腐にネギだ。 そして、シャキッとした芹に春菊!! いやー、なんとも、こりゃまた!!!! 「銕ッあん、これゃどうにもこうにも もー、どうなっても構わねーよー」 「彦よ、どんどん飲れ、どんどん」
by shige_keura
| 2008-01-07 10:18
| 食
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