日本が誇る代表的洋食、
それは”トンカツ”であることに 異論を挟む人はないだろう。 そのトンカツ屋の名店が 何故か上野に集中している。 御三家と言われる ”本家ぽん多”、”双葉”、”蓬采屋”をはじめ ”井泉”、”蘭亭ぽん多”、”平兵衛”、 ”武蔵野”、”とん八亭”等々 やたらと数多い。 何故に上野に集中しているか??? これが色々調べても分らない。 私なりの苦しい理由付けは以下の通り。 日本の中心東京には その昔から大きな玄関口が二つあった。 ひとつは東京駅で いわば東京の表玄関。 一方の上野駅には 東京の裏玄関のイメージが付きまとう。 その昔、東京駅からは 流麗なる特急、”ツバメ”が颯爽と西に下る。 一方の上野駅はと言うと うら寂しい汽笛を残して 夜汽車は一路寒村の東北に向う。 或いは、夜の闇が漸く白々とする頃、 集団就職、季節労働者の群れを乗せ 蒸気機関車は息も絶え絶え 上野駅に到着する。 あたかも、乗っている人々の 疲労が乗り移ったかのように。 上野駅から故郷に帰る人は この機会に東京の味を 思い出としてとっておこう。 そして、上野駅に着いた人たちは これからの厳しい生活に備え 東京の味を栄養として蓄えよう。 この場合、値段、味、ボリュームが重要であり 余りにハイカラすぎても 楽しく食べられない。 ならば、”トンカツ”をおいて他にはない!!! そこで、上野にトンカツ屋が 繁盛したわけだ。 本当かい????? さてさて、今まで上野で トンカツを食べたことのなかった私、 このたび漸くにその機会を得た。 「これだけ店があると迷うだろう?」 「それが違うんだな。 先ずはこの店に決まっているんだよ」 それは、”御三家の中の本家” 創業は明治38年、御三家の老舗中の老舗、 ”本家ぽん多”をおいて他にはあるまい。 門構えはいかめしく入りづらい。 扉を開けると、 中には、朝青竜あるいは 菅原文太のようなお兄さんが 怖い顔して睨んでいるような気配がする。 それが、あにはからんや如才ない応対、 1,2階ともトンカツ屋にしては 上品な雰囲気に包まれている。 流石、宮内庁のコックを務めていた 創業者の伝統を今も受け継いでいるようだ。 一説によると、ウイーン風牛のカツレツ(ウインナシュニッツエル)を参考に 日本で初めて豚を油で揚げる トンカツのルーツはこの店にあるとのことだ。 運ばれてきたトンカツ、 注目すべきはその色合いだ。 通常のトンカツが黄金色とすれば ”ぽん多”のそれはプラチナ色だ。 フライと言うよりか天麩羅を思わせる色は 私には若干頼りなく映った。 豚肉はロースのみ、 すこぶる肉厚、相当なるボリュームだ。 食べてみてまたまた驚く。 低温でじっくりと揚げた為だろう、 そのアッサリ感、軽さは特筆ものである。 ソースもウースターに似た薄めが合うし 塩で食べるのも乙なものだ。 今回は従弟と二人の ”弥次喜多道中”、 トンカツと穴子のフライを頼み それぞれの味を楽しんだ。 この穴子も驚くべきボリュームなのだが サクサク、ホクホク、 どんどん胃袋に吸い込まれて行く。 これだけフライを食べて 腹にもたれないと言うのも珍しい。 ちょいと値段は高めであるが この世に、こんなトンカツもあったのかと 舌に胃袋に新しい一頁が加わることは請け合いだ。 「おい、ここまで来たからは 日暮里で羽二重団子でも食っていくか」 これは、トンカツを食べた 2時間後の二人の会話である。
by shige_keura
| 2008-06-25 08:49
| 食
|
| ||||||
ファン申請 |
||