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珠玉の高座
落語が大好きな私にとって
最大の心残りは
故志ん朝師匠の実際の高座を
見る機会を逸したことである。

それは1980年代の事と思うが
オランダ、アムステルダムにある
ホテルオークラでの出来事だった。

たまたま同ホテルに宿泊していた私が
外出しようとロビーを横切っていた所
向こうからジーンズ姿の日本人が
颯爽とやってきた。

その若々しい足取りの男が
たまたま欧州に来ておられた
志ん朝師匠だった。

それが志ん朝師匠をこの目で見た
最初で最後だった。

師匠の噺には
品があって華があって
色気がある。

更に、気風の良い
江戸弁は耳に爽やかだ。

兄の故馬風師匠も上手かったが
鯔背で闊達な味わいとなると
弟には到底敵わない。

このほど、待望の志ん朝DVD全集を購入し
少しずつ楽しんでいるが
あらためて彼の芸の奥行に感嘆した。
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「文七元結」(ぶんしち もっとい)!

師匠の素晴らしい話芸が詰まっている
DVD全集の中での白眉が
「文七元結」だ。
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この噺は
落語界の大名人と言われる
三遊亭圓朝が中国の民話をもとにした
人情噺である。

その出来が素晴らしかったので
歌舞伎にも取り入れられたという。

それを、現在の形に完成させたのが
7代目三遊亭円生で
究極に仕上げたのが
志ん朝師匠の「文七元結」だ。

1時間18分の長さがまるで感じられぬ
微塵の隙も無い熱演である。

主人公、左官の長兵衛はじめとする
登場人物7名の描き分けの巧さ
間の取り方に場面の転換
すべてが完璧と言ってよい。

勿論、人情話の中に
師匠得意の笑いのくすぐりを
随所にちりばめている。

DVDとは言え
このような名人芸に触れられるのは
誠に幸せなことである。

尚、”元結”は普通は”もとゆい”だが
当時の江戸っ子は
”もっとい”と発音していた。

髷の”もとどり”を結ぶ
和紙から作る紐を意味している。

噺の中で、長兵衛に助けられた
鼈甲屋の手代で正直者の文七が
長兵衛の娘と結ばれて
元結屋を営むことが
お題の由来となっている。

落語好きの方には
必見の高座である。
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by shige_keura | 2008-07-14 09:40 | | Comments(0)
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