我が家のベランダにある
”篝火草”の一鉢も 葉の間から蕾が顔を見せ 開花を待つばかりとなっている。 ”篝火草(カガリビバナ)”とは 冬の花として人々に好まれる シクラメンの和名である。 黄色いリボンとは 御存知ジョン・フォード得意の西部劇、 「アパッチ砦」、「リオグランデの砦」と並ぶ 騎兵隊三部作として 世に聞こえている。 両者の繫がりを紹介する前に ”篝火草”の由来を話そう。 大正の三美人と謳われた 教育者にして歌人の九条武子が シクラメンを見たときに漏らした言葉。 それが、「これは篝火のような花ですわね」だった。 それを植物学者として名高い 牧野富太郎が聞き名づけたものだ。 まさに、高貴な方の命名に相応しく 寒い冬、人々の心を和ませてくれる 存在感に溢れる美しい花だ。 尚、この花はもうひとつの 名前を持っている。 ”豚の饅頭”、 これは英国でのシクラメンの名前 ”Sow Bread”を訳したものである。 但し、これはシクラメンの花ではなく 球根の形からきている名前であり シクラメンの花が迷惑しそうな名前である。 12月14日、NHKの”趣味の園芸”にて、 ”篝火草”との和名を初めて聞いたときに 咄嗟に思い出したのが 「黄色いリボン」なのだ。 この映画は ジョン・フォードが初めて手掛けた カラーによる西部劇。 何故ならば、彼はこの映画で 愛する西部の大自然を あまねくカラーで撮りたいと思ったからである。 フォードの想いがギッシリと詰まった作品。 私が最も好きな場面のひとつが ジョン・ウエイン扮する 退役間近な老中尉が 亡き妻の墓に語りかける下りである。 モニュメント・ヴァレーを染める真っ赤な夕日 しみじみと墓に語りかける老中尉、 そこにひとつの長い影が近づいてくる。 振り向いた中尉の前には 真っ赤なシクラメンを差し出す 隊長の娘(ジョーン・ドルー演)が立っていた。 「有難う、この花は 妻が大好きだったんだ」 「私の祖母は、この花を ”兎の耳”と呼んでいましたわ」 「”兎の耳”か・・・・・、 家内は”燃える矢”と言っていたよ」 場所はアリゾナ辺境の砦、 インディアンとの争いに明け暮れていた。 時には、インディアンの放つ火の矢で 空は赤く染まっただろう。 ”兎の耳”も可愛らしくてピッタリだが ”燃える矢”は映画にも花にも、 更に相応しく、忘れられぬ言葉となった。 そして、今回聞く”篝火草” どれもがシクラメンにピッタリの名前である。 我が家の”燃える矢”、”篝火草”、 年明けには可愛いピンクの花が満開となるだろう。
by shige_keura
| 2008-12-19 09:04
| 観
|
| ||||||
ファン申請 |
||