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S君とモダンジャズの思い出
先日、ひょんなことがきっかけで
見直すこととなった映画、
「真夏の夜の夢」が
若き頃のジャズの思い出を
蘇らせてくれた。

私がモダンジャズに興味を持ったのは
中学3年の時
隣りに座った友人の感化である。

彼、S君は文学青年、
なおかつ欧州映画の熱狂的ファン
私にとって当時難解な
フランス、イタリア映画に傾倒していた。

更に、自分でもピアノを趣味としていたことで
モダンジャズへの造詣が一際深かった。

彼は当時のジャズ専門誌
”スイングジャーナル”にコラムを持っていた
大橋巨泉さんを高く評価していた。

その一方では、
当時日本でブレークした
アート・ブレーキーの一世を風靡した”モーニン”を
ジャズの堕落として全く評価しなかった。

S君の当時の評論は
私には高尚過ぎて
とても理解する事はできなかった。



しかし、彼の推薦する
レコードを聴くたびに
その音楽鑑賞の眼が高い事に
驚かざるを得なかった。

それは、ソニー・ロリンズの
”サキソフォン・コロセス”、
或いはマックス・ローチ、ミルト・ジャクソンの
”バクスグルーブ”だったりした。
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中でも、初心者の私の為に
「これだよ!」と
推薦してくれたのが
”マイフェアレディ”だった。
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これは、ミュージカルの傑作ナンバーを
モダンジャズにアレンジした
なんとも洒落た名盤であった。

流れるように澄んだ音色のピアノは
アンドレ・プレヴィン。
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プレヴィンは少年の頃より
天才ジャズピアニストの名をほしいままにし
後に映画「マイフェアレディ」の音楽監督
更にはロンドン・フィルの指揮者も勤めた才人だ。

そのピアノを盛り立てるように
歯切れのよい音を刻むのが
ドラムスのシェリー・マン。

共に、アメリカ、ウエストコースト派の
白人ジャズ・プレーヤーだった。

当時のモダンジャズは
イーストコーストの
主に黒人がかもし出す
エネルギッシュな演奏が人気を呼んでいた。

彼らの類稀なる本能から
繰り出される音楽は
それは素晴らしいものがあった。

しかしながら、私は白人主体、
ウエストコーストの
洗練された味が
性に合っていた。

具体的にはドラムスでも
黒人のアート・ブレーキー、マックス・ローチよりも
シェリー・マンが大の贔屓だった。

ローチもブレーキーも
素晴らしいドラマーだ。

しかし、シェリー・マンの
歯切れの良さと
小粋なスティック捌きからは
当時憧れのアメリカ白人社会が持つ
ハイソソサエティの香りが滲み出ていた。
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だから、彼がダニー・ケイの
「五つの銅貨」に出演した時は
それこそシェリー・マン目当てで
映画館に通ったものだった。
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中学から高校生、
S君とはクラスが分かれ
先生を失った僕は
徐々にモダンジャズから
離れていってしまった。

しかし、今でも時々はCDで
あの名盤「マイフェアレディ」を聞きながら
遠い昔を思い出している。

ジャズが好きな人、
特にピアノが好きな人は
是非聞いて欲しい。

あの澄んだ音色の虜になるに違いない、
そして軽快なるドラムスも
心に残るだろう。

S君は銀座に店を出し
今でもピアノを弾いている。

暫くぶりで
昔のお師匠さんに会って
「真夏の夜のジャズ」談義でもしてみたい。

オールドパーの
オンザロックスでも傾けながら。


ー追記ー
アンドレ・プレヴィンは今年79歳、
しかし、彼の音楽に対する情熱は未だに健在、
今年の9月から3年契約で
NHK交響楽団の主席音楽指揮者を努める。
by shige_keura | 2009-06-25 22:01 | その他
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