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伝説の投球  -3-
江夏の勝敗を分けた
第19球目の話を続ける前に
9回裏の攻防を
最初から振り返ってみたい。

何しろ、9回裏の攻防だけで
26分49秒を要したのだから。

しかし、長いからといってだれることなく
緊迫感溢れた
実に密度の濃い攻防だった。

更に、勝利の女神が
あっちを向いたりこっちを見たり
野球の面白さが
これほど現れた時もない。

先ず、9回裏を迎えるに当って
広島の古葉監督は守備位置の変更を告げた。

3塁の衣笠を1塁に
2塁の三村を3塁にである。

三村は衣笠に比べ
3センチ背が低い。

この事が勝負の行方を大きく左右するとは
この時点では誰もが考えなかっただろう。

さー、9回裏近鉄の攻撃開始だ!

先頭打者の6番羽田が
初球をセンター前に弾き返す。
伝説の投球  -3-_c0135543_1534287.jpg

これは江夏にとって
思っても見なかったことだった。

江夏の常識では
9回裏1点差の場面
打者は様子見、
初球ヒッティングは
予想外の出来事だったのである。

江夏は外角に甘めのボールを
不用意に投げ込んだのを悔やんだ。

しかし、その一方では
後日次のように語っている。

「大体あの場面で
 最初からふってくるような奴は
 碌なバッターじゃない」

代走に俊足の藤瀬、
次打者はアーノルド、
1-2後、監督西本は
ヒットエンドランを仕掛けた。

ところが、アーノルドはサインを見落とす!

               (送球がまともなら楽々とアウト!!)|
伝説の投球  -3-_c0135543_15365731.jpg

スタートが遅れた藤瀬は
2塁で憤死と思いきや
水沼の投球がとんでもないワンバウンド、
送球はセンターに抜け
近鉄は労せず無死3塁のチャンスを得た。

ここでバッテリーは
アーノルドを敬遠
走者は代走の吹石が起用された。

8番は左に強い平野。

カウント1-2のとき
吹石は2盗に成功する。

このとき、江夏は水沼が
2塁に送球しなかったことにカーッときた。

江夏としては
1点は取られても
アウトを稼ぎたかったのだ。

即ち、江夏はこのとき
同点は覚悟していたのだ。

先ほどの悪送球に続く失態、
水沼は気配を察し
マウンド上に駆け寄る。
伝説の投球  -3-_c0135543_1539530.jpg

謝る水沼、
憮然とする江夏。

しかし、結果的に見れば
このことが近鉄をゼロで封じ込める事となるのだから
野球の神様は時として気まぐれなものだ。





何故ならば、無死2,3塁となった事で
当っている平野を
迷うことなく敬遠することが出来たのだから。

今度は平野が憮然として
1塁に向った。

さー、無死満塁
代打には左殺しの佐々木が起用された。

前年の首位打者で
この年のペナントレースでも
勝負強さを発揮した佐々木だが
膝の故障で日本シリーズでは
ベンチを温めていた。

しかし、ここは江夏とは言え
得意の左投手
まさに、舌なめずりして
打席に立ったに違いない。

ここで、数々のドラマが生まれる。

先ず最初のドラマは
1ボール後の2球目
ど真ん中の直球を
佐々木が見送ってしまった事だ。

               (江夏は佐々木の初球の見送り方で
                カーブ狙いを完璧に読み切っていた)
伝説の投球  -3-_c0135543_1540967.jpg

カーブを狙っていたとは言え
余りにも絶好球の為
身体が金縛りにあったのだろう。

佐々木は今でも
この場面の夢を見るという。

「何で、あの球を見逃したか!!」

続く3球目、佐々木はバットを一閃、
バッテリーと3塁手の三角地点にバウンドした打球は
高く上がって3塁手の頭を越えて
ラインの僅か左で二つ目のバウンドをした。

この当たりはこの上もなく微妙!

               (3塁塁審のファールの判定)
伝説の投球  -3-_c0135543_15433673.jpg

塁審がフェアと判定しても
おかしくない打球だった。

更に打球はジャンプした三村の
グラブをかすめるように
頭上を越えていった。

ここでグラブにかすったらフェア!
よしんば、辛うじて捕っても
本塁は間に合わなかっただろう。

もしも3センチ背の高い衣笠であれば
局面が大きく変わっていたかもしれない。

               (判定はファールながら、一瞬前のこの画像からは
                フェアにも見えるが・・・・・・
                しかし、江夏はあのコースがフェアになるはずがないと断言)
伝説の投球  -3-_c0135543_15443655.jpg

3塁コーチの仰木、
ベンチの西本監督は
何故か抗議もせず試合は続行。

               (3塁線の当たりのあと思わずベンチを出る西本監督
                彼はこう判断した、”コーチの仰木が抗議せんのだから
                ファールなのやろーな”)
伝説の投球  -3-_c0135543_1547199.jpg

しかし、このとき江夏にとっては味方の
一塁手衣笠が彼に駆け寄ってきた。
伝説の投球  -3-_c0135543_1549931.jpg

その理由は明日に続く。
by shige_keura | 2009-07-08 09:26 | スポーツ
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