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”すい”と”いき”
漢字で書けば同じ”粋”だが
読み方には”すい”と
”いき”の二通りある。

では、”すい”と”いき”は
どう違うのだろうか?

創業、安政4年(1857年)
以来、日本橋で店を構える
和菓子の老舗
榮太郎の元当主
細田安兵衛氏の話を伺った。

基本的に”すい”は西の言葉
”いき”は東の言葉である。

西の”すい”とは
茶道、華道、踊り等の
文化芸術
或いは花柳界のしきたりに
極めて精通することである。

そして、その道を極めた人を
粋人(すいじん)と呼ぶ。

西の”すい”と同じ意味を
東では”つう”と言う、
極めた人は通人(つうじん)だ。

一方、東の粋(いき)は
美意識の表現、生き様であり
西の”すい”のような行動原理ではない。

それでは西と東の
美意識の違いは何処にあるのだろう。

言葉で言えば
西の美意識は
雅、優雅、侘び、寂びになる。

一方、東の美意識は
”いなせ”、”おつ”、”しゃれ”
そして”いき”になる。

両者の代表的な
織物で比較してみよう。

京友禅の特徴は
華やかな花鳥風月で
色使いも多彩である。
”すい”と”いき”_c0135543_1321198.jpg

一方の江戸小紋は
多くが縦縞模様であり
単色で、使う色も
紺、鼠、茶と地味で控え目だ。
”すい”と”いき”_c0135543_13234356.jpg







粋(いき)の定義は
諸説あり、難しいが
”ハリ”と”ビタイ”と”アカヌケ”の
三文字に集約される。

”ハリ”とは
妥協しない心、
或いは義侠心となる。

”ビタイ”は
媚を売ることではなくて
洗練された色気と美しさである。

”アカヌケ”は
執着心が無く
サッパリとしていることだ。

このような粋(いき)の心を持った
夫婦以外の江戸っ子の男女が
知り合ったらどうなるか?

そこには男女の肉体関係は無く
どこまで行っても平行線、
精神的な好意の域を出ない。

肉体関係が無くとも
相手の事はお互いに
深く認め合っている。

それを共に分っている、
それが粋(いき)な関係なのだ。

だから、江戸っ子の間には
心中事件が起こらなかったのである。

歌舞伎、浄瑠璃の心中物は
みな上方の話だ。

話は変わるが
上方と江戸の表現の違いを表す言葉として
”小”(こ)と”ど”が挙げられる。

江戸っ子は
接頭語として”こ”を良く使った。

”小粋”をはじめ
”小ぎれい”、”こざっぱり”
”小憎らしい”、”小首を傾げる”
”小手をかざす”等々だ。

一歩下がった謙虚な表現のなかに
粋(いき)が感じられる。

「江戸っ子は宵越しの金は持たねー」
これを言うのは
本当の江戸っ子ではない。

身分の低い貧しい者のセリフであって
”金は持たねー”ではなくて
”金は持てねー”なのだ。

本当の江戸っ子は
金持だがそのことをひけらかしたりはしない。

江戸っ子のお洒落が
羽織の裏地に凝るのは
その典型である。

一方の上方、特に大阪で
よく使われるのが
”ど阿呆”、”どでかい”、”ど根性”
そして”ど助平”である。

表現が大袈裟となり
それこそ度が過ぎている。

人それぞれ、好き好きだろうが
東京生れの私としては
”小”を圧倒的に支持したい。

最後に粋の話に戻るが
粋(すい)の反対は不粋(ぶすい)だが
粋(いき)の反対は何だろう?

それは”野暮”ってものでござんす。

それじゃ”野暮なお人は”
どのようなお方かと申しますとね・・・・・、

それは”粋(いき)がる”お人ってわけですな。

この世の中
野暮なお人が
随分とおいでのようでございますな。

参考、
東洋経済定期講演会、8月28日
「粋の話」 細田安兵衛氏
by shige_keura | 2009-09-07 08:40 | その他
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