5月21日から23日まで、
新国立美術館にて「森から始まるリレートーク」と銘うった 興味深いセミナーに出席する機会を得た。 日本を代表する建築家、家具のモデラー、 インダストリアルデザイナー、インテリアデザイナー、 アーティスト等々の話は いずれも森、木々、そして自然・環境へのこだわりが深く 聞く我々の胸に強く迫ってきた。 今日から何回かに分けて 講師の方々のお話を紹介しよう。 セミナー会場前には 同じ形をした椅子がずらりと並べられ 参加者の目を引いた。 その数、200脚、 すべての椅子、姿、形は同じでも 木の種類がそれぞれに違う。 従って、木の性質によって 完成までの工法は異なってくる。 ただひとつ同じ条件であることは 製作に入るまで、どの木も 5年間の自然乾燥期間を経ていることである。 赤松、黒松、胡桃、杉、檜、ブナ、栗等 日本では御馴染みの木を利用しているかと思えば 今や入手がほぼ困難なレバノン杉、 ハワイ王朝との縁が深いハワイアンコア(ハワイアンマホガニー) 等のエキゾチックな木々、 そして我々が慣れ親しんだゴルフクラブのヒッコリー、 硬式野球バットの原材トネリコ等 多彩この上も無い。 だから、それぞれの肌合い、木目だけ見ていても 一向に飽きがこない逸品ぞろいである。 製作者は、今や日本を代表する 家具モデラーの宮本茂紀氏である。 氏は1937年、東京の生まれ 16歳で椅子職人を志し イタリア、ドイツで修行後 1966年、椅子開発を専業とする会社を興した。 その後、赤坂迎賓館の伝統的な家具製作や修復、 海外ブランドの家具製作を手掛け 日本に於ける家具モデラーの一人者との 評価を受けるに至った。 宮本さんが40年ほど前から製作しているのが この日に並べられている椅子の数々で その名を「ボスコ」と呼ばれている。 「ボスコ」とはイタリア語で”森”の意味、 世界の森から得た材木を使っていることから この名前がつけられたのだろう。 彼の狙いは、木の表情を シンプルに表現したデザインと 日本人がこだわる”木目”の感覚を大事にしたことだ。 確かに「ボスコ」のスタイルはシンプルでありながら 凛としたただずまいを漂わせている。 そして驚きはその座り心地!! 背筋をピンと伸ばす適度な緊張感と 座っている面から伝わる優しい温もり、 いつまでも座り続けたくなる不思議な椅子である。 お値段は1脚、15万円弱、 製作過程の努力を考慮すれば割安な逸品だ。
by shige_keura
| 2010-05-28 10:01
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