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線で見て、線を斬る
表題の言葉は、書道にかけては日本の第一人者
杭迫柏樹(くいせこ はくじゅ)氏の講演会、
「書と人物」の中で述べたものである。

大震災の余震いまだ不気味に迫り、
原発の収束も先が見えず
こういう、不透明な落ち着かぬ時こそ
滅多に聞けぬ“書の話”で心を落ち着けよう。

世の中の芸術を、洋の東西で分けてみると
西洋ならば彫刻、東洋ならば書道が真っ先に挙がる。

東洋における書道の歴史は3500年、
絵画はたかだか1000年、歴史の重みが違う。

しかしながら、日本での書道は
携わった人間の器量(?)の関係もあり
芸術の片隅に置かれているのが現状だ。

「人書共に老ゆ」、中国のことわざだ。

即ち、書道の場合は
スポーツの世界、音楽、絵画と違って
天才少年書道家は未だかって現れた事がない。

即ち、書道とは人間が熟成していかないと
味のある良い字は書けないという事である。






書道の三要素とは以下のごとし、
1.誰が、2.何を、3.どう表現したか。

一般の人は1.にのみ注目するが
専門家が最も注目するのは3.である。

即ち、どのような字を使って
何を表現するかが、もっとも重要なことなのだ。

書というものは上手い、下手ではなく
良いか悪いかである。

それを見極めるうえで肝心なことは
書を”形”として見るのではなく”線”として見ることだ。

そして、その”線”を斬った時を想像してみよう。

その切り口から、鮮血があふれ出るか?
清冽な水がほとばしり出るか?
ドロッとした膿が出てくるのか?
或いは、カラカラに乾燥して何も出てこないのか?

そこから、自分にとって
良い字、悪い字、好きな書、嫌いな書の評価が定まる。

氏は最後に歴史上の人物の書を寸評した。

僧侶の4人では、
時代の古い最澄、空海は自信がみなぎった字、
少し後の親鸞はおおらかな、他力本願の字、
そして日蓮は一本調子、人を寄せつけぬ気配の字となる。
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               (右より、最澄、空海、親鸞、日蓮)

源義経は兄に比べて名筆、
胸がすく、スカッとした感じが出ており
いかにも運動神経に優れた者を思い起こさせる字だ。
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戦国の三大武将はそれぞれの性格が字に出ている。

織田信長の字は即断即決!
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豊臣秀吉は人情豊か、
人懐っこく、いやみがない、
殆ど漢字が見当たらないのは彼の学問のせいだろう。
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徳川家康の字は、呼吸が長い、
粘っこく、”急ぐべからず”が良く出ている。
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時は遡って平安の三蹟、藤原行也の書、
彼は清少納言との歌のやり取りで有名だ。

「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも
 よに逢坂の関はゆるさじ」 清少納言

行成は我が国で最も上手な書家と位置付けられているが
彼の出現以降、皆が彼の字を真似たがために
日本の書道の進歩が止まったとも言われている。
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いずれにせよ、昔の人は誰しもが
惚れ惚れとした味わいのある良い字を書いている。

「人書共に老ゆ」、
長寿化の現代では、味わいの良さが出るのは70代とも、
それでは、この私も少しは斬りまくって字を磨こうか!

参考:東洋経済、経済倶楽部月例講演会
   4月8日 杭迫柏樹氏 「書と人物」
by shige_keura | 2011-04-12 07:38 | その他
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