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さらばミスター・ハードボイルド
今日は大晦日、
好きな映画の話で〆ようと思っていた所に
ひとつの訃報が耳に飛び込んできた。

内藤陳さんが12月28日、75歳で死去、
心より御冥福をお祈りする。

その昔、トリオ漫才(お笑いトリオ)が流行ったことがあった。

最初に登場したのが、
NHK放映のお笑い三人組だと思う。

但し、このトリオは番組の為だけに作られたもの、
純粋の意味でのお笑いトリオの先鞭は”脱線トリオ”ではないだろうか。

由利徹、八波むと志、南利明の絶妙の笑いに触発され
三波伸介が中心の”てんぷくトリオ”、
東八郎リーダーのトリオ・スカイライン、
扇子で頭をひっぱたく”チャンバラトリオ”等が
テレビの画面を賑わせていた。

その中にあって、1962年ひとつのグループが結成された。

内藤陳が中心のトリオ・ザ・パンチである。

このグループは当時のトリオの中で
最もバタ臭さを発散していた。

それは、顎がしゃくれ、
日本人離れした内藤陳さんの風貌と、
「トリオ・ザ・パンチ」の名前にあると思う。

若者が憧れを抱いた洋風の香り満載の雑誌、「平凡パンチ」、
今でも人気が高い「ルパン3世」の作者モンキー・パンチ、
英語、「パンチ」の言葉が持つインパクトの強さにあった。

しかしながら、ハッキリ言ってしまうと
このトリオ、内藤陳だけが突出して面白く、
あとの二人は、つけたしの存在だった。

とは言え、怪優とも言うべき内藤陳が
私にとって大好きで気になる存在だった。

彼等の演しものは、殆どがギャングか西部劇。

特に、暗黒街もので陳の登場する時の決めゼリフが良かった。

トレンチコートに帽子を目深にかぶり
ピストルをポケットから出して言う、
「おら(俺)ハードボイドゥド、ダドー!!
 ハド、ハードボイルド、ダドーー!!!」
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そのあとに続く、当時の相撲中継で使われた
分解写真(連続画像)を模した
アクションシーンがバカバカしく面白かった。




内藤陳はその後、月刊プレーボーイで
「読まずに死ねるか!」のタイトルのもと
冒険小説、ハードボイルド小説の紹介をしていた。
さらばミスター・ハードボイルド_c0135543_9413428.jpg

言わば、書評家なのだが、
彼自身は「面白本のおススメ屋」と評していた。

かつて、景山民夫が陳について
エッセイ、「普通の生活」で次のように紹介していた。

タイトルは「赤いオールインワン」、
即ち、西部劇でジョン・ウエインとか
ワード・ポンド等が着ていた上下つなぎの下着のことだ。

陳が欲しがっていた赤い下着を民夫が偶々持っていて
プレゼントしようと、民夫が日劇MHに出演中の陳を訪ねた時のことである。

そのときの陳の役どころは、
フロックコートに粋なベストを着こんだ
ダンディーな流れ者のギャンブラーだった。

酒場で町のチンピラがくだを巻いている所に
登場する陳は死ぬほど面白く粋だったと言う。

楽屋にプレゼントを届けに行くと、
陳は相好を崩し喜んだ。

「いいのー? 嬉しいな-!!!
 これだよ、こーゆーのなんだね下着は!」

出番が迫った彼は、急に真面目顔で民夫に言った、
「ありがとッ! よかったら次の舞台見てくれる?」

客席に戻って舞台を見ていた民夫、
下手袖から登場した陳を見て腰を抜かした。

ダンディないでたちの筈のギャンブラーの陳が、
件の赤の下着の上にガンベルトを巻いて登場してきた。

ギョッとした共演者に陳はこう言った。

「前の町でツイていなかったのだ」

この文章、私の様に内藤陳を知るものにとっては
これだけでその場の情景が目に浮かび”ニヤリ”としてしまう。

今頃、陳さん、どんな格好であの世に現れたのかな―??
さらばミスター・ハードボイルド_c0135543_943611.jpg

「おら、ハードボイルドだどーーー」

さて皆さま、本年はこれにて御開き、
又、来年も宜しくお願い申しあげます。

新年は旧年末、つまり現在の今月末(ややこしいわ)に
訪れた金沢紀行からスタートする予定です。

皆様、良い年をお迎え下さい。
by shige_keura | 2011-12-31 09:50 | その他
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