通し狂言「浮世柄比翼稲妻」には
あと4人重要人物が登場してくる。 お家乗っ取りを企む、悪の巨魁、不破伴左衛門、 父の仇きを探しながらも忠義を尽くす名古屋山三、 二人から想いを寄せられる腰元・岩橋(後に花魁・葛城)、 そして二人の男と係り合いを持つ長兵衛の女房・お近である。 不破、名古屋、岩国は男女の恋のいざこざで 脱藩を余儀なくされ江戸に出る。 江戸で浪人暮しをする山三は 吉原の花魁となった葛城から 父の仇と思われる伴左衛門の様子を聞きとる。 そして数年後、春爛漫、 桜満開の吉原・仲之町で二人は思わぬ再会を果たす。 二人の登場は両花道を使う。 黒地に雲に稲妻模様の羽織の不破伴左衛門、 京都の俳人の発句、 「稲妻の はじまり見たり 不破の関」から来ている。 薄青の地に塗れ燕の衣装の名古屋山三、 江戸の俳人、其角の 「から傘に ねぐらかそうよ 濡れ燕」が元になっている。 悪役、伴左衛門に初めて挑むのが このたび、文化功労章を受賞した松本幸四郎、 骨太の悪玉を堂々と演じている。 忠義で美男の山三は中村錦之助、 負傷休演となった市川染五郎の代役を無難にこなしている。 二人が舞台中央に歩み寄り すれ違おうとした、そのとき 二人の刀の鞘が当たった。 ここから、このお芝居の最大の見せ場、 「鞘当」に入っていく。 もともと、鞘当とは武士の鞘が触れ合ったことが原因で いざこざが発展していくことを意味している。 ただし、この芝居では、そこから発展して 一人の女性を取りあうこと、 即ち、「恋の鞘当」ての原型なのだ。 刀を抜き、切り合いを始める二人、 ここに目元涼しげならも、気風が良く 勝気な女性が「留め女」として割って入る。 幡随院長兵衛の女房、お近である。 お近、花魁・葛城、腰元・岩橋、下女・お国、 一人四役をこなす中村福助が出色の出来、 芸域の幅の広さを如何なく発揮している。 二人の男は女の顔を立、て刀を鞘に納め、 三人でから傘を掲げて舞台で見得をきる。 「よー、高麗屋! 萬屋! 成駒屋!」 威勢の良い掛け声がとび、拍子木が鳴り、舞台は幕となる。 「綯交ぜ」、「鞘当」等、今回は歌舞伎から色々な事を学んだ。
by shige_keura
| 2012-11-08 08:45
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