江の島と言うとすぐ脳裏に浮かぶのが
その昔の怖い怖い思い出だ。 今でもそうだが、私は高所恐怖症気味の人間だ。 それは、幼稚園の頃、 初めて江の島へ行った時のことだ。 そのころ、島に架けられた橋は 今と違って画像にあるような木の橋だった。 歩き出した途端、足元の板の間から 逆巻く波が砕ける海が見えてしまった。 足が瞬くうちにすくんだ。 板と板の間から海に落ちる自分姿が浮かび 動けなくなってしまった。 見るに見かねたどこかのおじさんが おんぶしてくれて、漸く江の島に辿りつくことが出来た。 右手、遥かかなたに富士山を仰ぎ、 昔の思い出に浸りながら島に向かって歩を進める。 平日といえども結構な人出である。 お決まりの同世代のグループに交じって 若いカップル、学生たちの姿が意外と多い。 老舗旅館、「岩本楼」の前を通り過ぎた時、 昔の傑作喜劇の場面が浮かび上がってきた。 (大正期の岩本楼) それは井伏鱒二の原作を 豊田四郎が映画化した「駅前旅館」 1961年の作品だ。 この作品が大ヒットしたことがきっかけで 東宝は「駅前シリ―ズ」と称して 24作品も作られ、会社のドル箱路線となっていった。 ただ「駅前旅館」の設定は 上野駅前の旅館の女将と番頭の話だ。 それが何故、江の島かは次のような訳がある。 森繁久弥と伴淳三郎は、 上野駅前旅館の番頭として良き喧嘩友達。 或る日、町内の慰安旅行で江の島に行くこととなるが、 当時の夏の江の島と言えば、 各地の番頭にとって出稼ぎの場所で有名だった。 二人も若い頃は江の島の道を挟んだ旅館を背に 客の呼び込みで腕を競い合ったものだった。 二人は江の島につくと昔の血が騒ぎ、 旅館の旗を持って客寄せの腕を競う。 ここが映画のひとつの見せ場、 森繁と伴淳の軽妙な呼びこみ合戦、 特に飄々とした伴淳の持ち味に思わず引き込まれてしまう。 次なるは、添乗員として出演しているフランキ-・堺、 お座敷宴会で三味線をギター代わりに演ずる、 当時大流行したロカビリーの独演会。 フランキ-の狂ったような才能が弾けまくる。 三人の傑出した才能が存分に発揮された作品だった。 今、「駅前旅館」を作るとすれば どんな役者が考えられるだろうか? 両番頭が、笹野高史に柄本明、添乗員が風間杜夫、 これなら結構面白い作品が出来そうだ。 江の島とはまるで関係ない事を考えているいうちに 江島神社の石段が目の前に現れてきた。
by shige_keura
| 2013-02-04 08:34
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