タイトルの”かい”は貝と怪をかけたものだ。
アカ二シときて貝とくれば 思い出すのは志賀直哉の短編小説、「赤西蠣太」である。 仙台伊達藩のお家騒動を描いた風刺小説は 1936年、片岡千恵蔵プロの手で映画化され評判を取った。 伊丹十三の父、万作監督の映画は見ていないが 中学の時、小説を読んでいて面白かったのは 登場人物の名前が主人公・蠣太をはじめ 魚介に縁の或る名前がずらりと出てくる。 鱈之進、鯉之進、をはじめとして、 青鮫鱒次郎、鮒井鯵之助、海老名勘十等々・・・・ 長谷川町子さんは、ここからヒントを得て 「サザエさん」を作られたのではないだろうか。 前置きが長くなったが、金沢の鮨の名店「千取鮨」でのみ 私にとって、味わえぬ魚介がある。 その名前も赤西貝、鮮やかな赤が印象的、 コリコリとした食感と磯の香りが何とも言えぬ鮨ネタである。 千取の御主人がこう言った。 「この貝は能登半島・七尾の名産で肉は美味しいのですが ワタに強い渋みがあり、匂いがきついので調理が難しく 余り一般家庭の食卓には上がりませんね」 目の前に置かれた鮮やかな色の赤西貝、 福光屋の辛口燗酒・黒帯と共に堪能した。 自宅に帰ってから赤西貝について調べてみたところ、 なんだか様子が違うので途惑った。 赤西貝として紹介されている貝は 千取のものとは似て非なるものだった。 更には、産地として、愛知県の三河湾、 瀬戸内海、有明海が紹介されており 七尾湾については一言も触れられていない。 「これは変だぞ???」 更には「赤西貝は、食感がサザエに似ているので サザエの壺焼と称して使っている所が多い」との言葉、 これは何かが違っているなと思わざるを得なかった。 そして分かったことは、千取で食べた赤西貝は 七尾地方で使われている言葉で、 標準和名は「コナガ二シ」、太平洋岸の海には生息していない。 一方、標準和名の「赤西貝」は正確には「赤螺」と書き、 肉は確かにサザエと瓜二つと言って良いだろう。 機会あれば、サザエに良く似た太平洋岸のアカ二シを食べてみたいが、 どちらが旨いかは、食べる前から分かっているように思える。
by shige_keura
| 2014-02-04 08:59
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