狂ったように忙しかった9月そして10月初旬、
ブログは全く手つかづのまま1ヵ月半が過ぎた。 漸く、爺にとっての大仕事が終わり、ほっと一息、 早速向かったのは六本木ヒルズの映画館、 お目当てはクリント・イーストウッドの「ジャージー・ボーイズ」だ。 しかし、家を出た時点で、 まさか、映画館をはしごして二本立て鑑賞になるとは・・・・・。 「ジャージー・ボーイズ」とは 1960年代中期に世界的規模で成功したロック・バンド 「フォーシーズン」のメンバーの物語だ。 若者のロックバンドには当然のことながら 意見の相違、方向の違いから仲違えが出てくる。 吾々にとっては懐かしい音楽が流れる中 若者たちの音楽に賭ける夢を イーストウッドは時には郷愁を込めながらも しっかりと現実を見据えて素晴らしい娯楽作品に仕立て上げた。 映画のハイライトは、1967年に大ヒットした 「君の瞳に恋してる」(Can't Take My Eyes Off Of You)の誕生である。 歌と映画の素晴らしさもさることながら、 この作品で私は奇妙に因縁めいた気分を味わうことになった。 この歌を最初に知ったのは、 1978年に公開された「ディア・ハンター」(The Deer Hunter)である。 この映画の主題歌は「カヴァティーナ」なのだが 劇中に効果的に「君の瞳に恋してる」が使われてた。 本作品はヴェトナム戦争に参戦した友人3名が それぞれ精神的に深い傷を負い 共に楽しく過ごした若者の輝きを全く喪失してしまう物語。 (左・クリストファー・ウォ-ケン、右・ロバート・デ・ニ-ロ) 映画の前半部分の輝ける時代を象徴するかのように 使われたのが「君の瞳に恋してる」であり 後半、ヴェトナムで繰り広げられる戦場の惨状、 筋の暗転との対比として見事な効果をあげていた。 主役・ロバート・デ・ニ-ロも素晴らしかったのだが 忘れられぬ俳優となったのがクリストファー・ウォーケン、 アカデミー助演男優賞獲得に相応しい 鬼気迫る演技を見せてくれた。 戦争で精神を破壊された男、 その瞳は時には虚ろを彷い、時には狂気に燃えるている。 ヴェトナム戦後もアメリカには帰らず、 ただただ、死に急ごうとしているのか、 サイゴンの暗闇でロシアン・ルーレットに興じる。 自らのこめかみに当てた拳銃、 瞳は恐怖と死を願う虚ろな心が交錯している。 一発の銃声で彼の願いは遂げられた? アメリカから漸く彼を訪ねあてた親友(ロバート・デ・ニ-ロ)は その悲惨な状況の影響で心に深く傷を負う。 帰国後、大好きな鹿狩り(ディア・ハンティング)に出かけた彼、 目の前を通り過ぎる鹿に対し、引き金が引けなくなってしまう。 マイケル・チミノ監督、渾身の傑作である。 その、クリストファー・ウォ-ケンが 「ジャージー・ボーイズ」に重要な役どころで参加している。 今や71歳となったウォ-ケンだが その謎めいた瞳はいまだに健在だ。 しかし、そのミステリアスな瞳は 「ディア・ハンター」から35年経過した 時の流れを象徴するかのように静かだった。 「君の瞳に恋してる」、 ”Can't Take My Eyes Off of You”、 直訳すれば、「貴方から目をそらす事が出来ない」、 これは、まさにクリストファー・ウォ-ケンのことを意味しているようだった。
by shige_keura
| 2014-10-27 08:35
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