2012年から行われている「蒲田映画祭」の一環として、
今回、「蒲田映像フェスティバル」が、 東京の空の玄関として発展し続けている 羽田国際空港ターミナルで行われた。 「蒲田映像祭」が何故羽田で行われるのか? これに対する答えは以下の通りだ。 映像の原点とも言える映画の聖地が 蒲田であることは衆目一致している。 その蒲田から驚くべき進化を遂げている映像は 瞬時に世界を飛び回っている。 従って、「蒲田映像祭」のお披露目として 国際色豊かな羽田国際空港は絶好の開催地なのである。 2012年から始まった「蒲田映画祭」のお客様は主に大田区民。 映画祭の目的は、かつて栄華と共に発展した 「キネマの天地・蒲田」を、お客様と主催者が共有することで 街の活性化を進めていくことにある。 それが、今回は蒲田だけでなく、 蒲田から飛び出して大田区の要所である羽田から全国に、 そして海外に主に映像を通じて、 日本の美・技・心を伝えることを意図した壮大な仕掛けである。 開催は11月2,3の両日。 オープニングプログラムは伊勢神宮の式年遷宮を中心に据えて 太古の昔から森や海、川と共生を続けてきた 日本人の心に迫ったドキュメンタリー映像「うみ やま あひだ」。 写真家である宮澤正明氏の手によって描き出された画面は あくまでも美しく厳かで観る者の胸を打つ。 2日目は若き工学院学生たちによるアニメとコスプレで幕が開いた。 授業の一環として行われたイベントは浮ついたところはどこにも無い。 思い思いの役に扮した舞台上のコスプレの熱演、 それを熱心に食い入るように見つめていた学生たちの姿、 共に印象深いものがあった。 牧野健太郎氏による浮世絵の拡大図を使っての説明はユニークこの上もない。 浮世絵原画では見過ごしてしまう細部に打つ出されているもの。 それは当時の江戸庶民の背伸びはせずともお互いに思いやり、 人情に満ち溢れ、生き生きとした日常生活である。 スイス人ファミリー6人組による 外国人の視点で描かれた映像には 我々、日本人が、ともすれば忘れがちな日本の良さが一杯につまっていた。 好奇心と行動力に溢れたスイス人家族は 日本人の忘れ物を心優しくも届けてくれたのである。 最後を飾ったのは人気現代墨絵アーティスト、 茂本ヒデキチ氏のトークショーと墨絵のライブイベント。 所要時間は僅かの20分。 真っ白な紙に筆に含ませた墨を散らすことでパフォーマンスが始まった。 開始2、3分を過ぎたころ、 何が現れてくるのか?? 全く見当がつかない。 ほどなくして、何やら馬のような、 ペガサスとも連想させる形が描かれてきた。 15分ほどで、騎馬侍の雄姿が徐々に浮かび上がってきた。 イベントが行われた羽田の江戸舞台に相応しく、 戦国の騎馬武将が見事に登場!! 手練の技が観客を魅了した。 ヒデキチさんは言う。 「筆が動いている間が作品であり完成したものは私にとっては作品ではない」。 含蓄のある言葉だが、それが真に腑に落ちたライブイベントであった。 (スイスファミリーも墨絵に魅了) 会場の外では昔懐かしい「縁台将棋」。 そこでは、老いも若きも街の将棋自慢が 島九段をはじめとするプロの棋士相手に 一世一代の名人戦を繰り広げていた。 国際空港に、かつての日本人がこよなく愛した人間の繋がり、 縁台将棋を取り入れたユニーク溢れる趣向である。 秋晴れの両日、羽田を発着する飛行機の数々、 今回のイベントが少しでも羽に乗って様々な場所に運んでくれることを望む。 日本人は自分たちが持つ歴史の深さ、 心の清らかさ、匠の技を決して忘れてはいけない。 (映画「うみ やま あひだ」の一場面)
by shige_keura
| 2016-11-11 14:20
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