馬肉の鍋を何故”桜鍋”というか?
殆どの解説書によると ”馬の肉が桜色をしているからだ”とある。 しかし、以前より私にはこの説が どうにも嘘っぽく思われていた。 理由は二つある。 ひとつは肉の色が桜に似ているのは 馬肉よりも霜降りの牛肉だと思うからである。 もうひとつは、イノシシの牡丹 鹿の紅葉の由来に比べ 単なる肉の色が似ているというのは 余りにも情緒がないと思ったからだ。 これでは馬が可哀相である。 何か異なる由来があるに違いない。 ところが最近になって これぞ、我が意を得たりの由来を見つけた。 それも尊敬する 故池波正太郎さんが明快に述べているのだ。 桜鍋の由来は 昔から伝わる里謡、端唄、都都逸にある。 ”咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る” 実はこの歌、昔から凄く良いと感じていたものの 桜鍋の由来の歌であるとは 気がつかないでいた。 桜満開の木の下に駒が繫がれている。 駒が身体を揺すると 桜の花びらがヒラヒラと 艶々した馬体にふりかかっていく。 歌を聞いただけで 春爛漫の光景が 目の前に広がってくる。 尚、この歌は 江戸の初期に伊勢の民謡から出発し 元禄時代に端唄としてはやり、 幕末の竜馬の時代に 都都逸として好まれていった。 竜馬が駿馬と桜の都都逸を謡う! これまた絵になるとは思いませんか? さて、ここは江東区森下に在る 桜鍋の”みの家” 創業明治30年の老舗だ。 ここは下町の居酒屋名店 山利喜のすぐそばにあって 前々から気になっていた店だ。 3月某日、漸く長年の念願が叶った。 大きな下足札を貰い 座敷に腰をすえる。 平日の昼間とあって 店内は閑散としているが 時々旨そうな鍋の匂いが漂ってくる。 あっさりとした馬刺を燗酒で飲りながら、 待つ程もなく鍋が運ばれてくる。 甘めの味噌が 何故か馬の肉に合う。 肉は硬くならないうちに 手早く胃袋におさめた方が良い。 あっという間に肉はなくなるが そのあとの葱、豆腐、白滝、麩が 味噌たれと馬肉の脂に 馴染んで美味しい。 なかなかに良い気分となって 店を出る。 さて、長谷川平蔵気取りで 深川界隈の見回りにでも出かけるとしようか。 これで都都逸でも 口ずさむ事ができれば良いのだが・・・・・・
by shige_keura
| 2008-03-10 11:42
| 食
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